ジェトロ、人権尊重ガイドライン実装ウェビナーを開催

(日本)

海外調査部

2022年10月14日

ジェトロは1013日、経済産業省と共催で、日本政府が発表した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン(以下、ガイドライン)」に沿って、実際にどのように人権尊重のための実務を進めていけばよいかを解説するウェビナーを開催した。

来賓あいさつとして、冒頭で中谷元内閣総理大臣(首相)補佐官が、同ガイドラインのとりまとめにあたった立場から、策定に向けた思いを示した。中でも、最近出張したベトナムとタイにおいて、日本初、アジア初のガイドラインを、両国政府、現地の企業に対し、さらには国連が主催した「責任ある企業行動とビジネスと人権に関するアジア太平洋地域フォーラム」において発信し、ステークホルダーと意見交換したことを披露した。また、こうした日本のアプローチに対し、アジア各国政府や、経済界・市民社会などのステークホルダーから高い関心と期待が示されたことを紹介、ガイドラインの実践が日本企業の責任あるサプライチェーンの質の向上を通じて、政治や社会の課題解決につながっていくことを強調した。

続いて、経済産業省大臣官房ビジネス・人権政策室長の豊田原氏が、欧米の法制化動向やこれまでの「ビジネスと人権」に関する政府の取り組みを踏まえた上で、ガイドラインの全体像と構成を解説した。豊田室長は、グローバル化の中で、人権尊重対応は経営課題として必要な取り組みであることを強調、より深刻度の高い人権への負の影響から優先して取り組むべきことが示した。

次に、西村あさひ法律事務所パートナーの根本剛史氏が、ガイドラインの実践に当たっての留意点として、(1)見るべきは、負の影響を受ける人のリスク、(2)サプライチェーンそのほかのビジネス上の関係先も対象となること、(3)一回きりではない、継続的な取り組みが必要となること、(4)さまざまなステークホルダーとのエンゲージメントが必要であること、(5)社内の横断的な連携が必要であること、を示した。また、国際的には、説明・情報開示をして、初めて人権デューディリジェンスを実施したことになると説明するとともに、海外法制への具体的な対応事例についても補足した。

続いて、EY新日本有限責任監査法人シニアマネージャーの名越正貴氏から、(1)企業に求められる人権尊重責任と、(2)人権への負の影響への対応、の2点からの具体的な取り組み方法が示された。後者については、高リスク事業の特定、負の影響の具体的な特定・評価の視点から、具体的な事例やアプローチ例を含めて解説した。

写真 ウェビナー来賓の中谷補佐官(右端)と講師の方々(ジェトロ撮影)

ウェビナー来賓の中谷補佐官(右端)と講師の方々(ジェトロ撮影)

最後に、中谷補佐官がウェビナー終了に当たり、政府としても必要な環境をつくり、国際協調して進めていく旨の総括的なコメントを示した。

なお、本ウェビナーの動画を1020日以降に、ジェトロの特集「サプライチェーンと人権」サイトに掲載する予定。

(田中晋)

(日本)

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