クワルテング財務相、所得税最高税率の引き下げ予定を撤回

(英国)

ロンドン発

2022年10月14日

英国のクワシ・クワルテング財務相は10月3日、9月23日に発表した経済対策(2022年9月26日記事参照)のうち、年収15万ポンド(約2,430万円、1ポンド=約162円)以上の所得者に対する税率の引き下げを撤回することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。従前の45%を維持するとした。

財務相はまた10月10日には、財務特別委員会宛ての書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、11月23日に予定していた中期財政計画(2022年9月27日記事参照)の発表を10月31日に前倒しする意向を示した。経済対策の「成長計画」発表後、ポンドの下落や債券利回りの上昇など市場が混乱、イングランド銀行(BOE、中央銀行)が長期国債の一時的な購入と保有国債の売却延期を発表していた(2022年9月29日記事参照)。

トラス首相への評価はさまざま

10月2~5日には英国バーミンガムで保守党の党大会が開催され、エリザベス・トラス首相が最終日の5日に演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、経済全体の拡大に向けて高税率、低成長のサイクルを抜け出す必要があるとして、成長を優先するとした。その実現に向けて、減税や国家財政のコントロール、経済改革の推進に取り組むと述べた。一方、労働党や自由民主党、スコットランド国民党を「反成長連立(anti-growth coalition)」と批判した。

しかし、10月6~7日に調査会社ユーガブが行った調査では、総選挙が行われる場合に労働党に投票すると回答した割合は52%と、22%の保守党を大きく上回っている。

報道各社のトラス政権への評価は分かれている。「ガーディアン」紙(10月5日付)はトラス首相の演説について、同氏の不人気な政策を守ることを優先し、党としての理想を重んじるような内容ではなかったとした。「スカイニュース」(10月5日付)も、党内の反トラス派が引き続き問題となるだろうとしたほか、演説についても詳細や新たな発表などがなされなかったことは異例と評した。

他方、「タイムズ」紙(10月5日付)は、トラス首相は党内での地位はかろうじて固めており、説得力のある最低限の働きはしているとした。ただし、保守党が失った支持を取り戻すために取り組むべきことは多々あるとした。「フィナンシャル・タイムズ」紙(10月5日付)は総選挙まで2年以上あり、経済情勢の改善の可能性もあるとしたほか、国民の労働党への支持についても、政府(保守党)への不満によるところが大きいとした。

(山田恭之)

(英国)

ビジネス短信 e5ca5a2591a2e0f4