英財務相、減税含む経済対策「成長計画」を発表

(英国)

ロンドン発

2022年09月26日

英国のクワシ・クワルテング財務相は923日、経済対策「成長計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表(英国政府発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同相は同日の議会での演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、成長に焦点を置いた新手法が必要だとして、中期的に経済成長率2.5%達成することを目指すとした。

今回の対策では以下3つの優先事項を挙げた。

  • 供給サイドの改革
  • 財政に対する責任ある手法の継続
  • 成長加速に向けた減税

対策の概要は以下のとおり(添付資料表参照、注)。

  • 20234月以降の大企業向け法人税増税を中止し、19%を維持。
  • 20224月より導入済みの国民保険料の引き上げを撤回し、116日より引き下げ。
  • 土地・不動産の取得にかかる土地印紙税について、ゼロ税率の対象となる不動産評価額の上限を25万ポンド(約3,875万円、1ポンド=約155円)に引き上げ。初めて住居を購入する者に対しては、ゼロ税率の対象となる評価額の上限を425,000ポンドへ、5%の軽減税率の対象となる上限も625,000ポンドへ引き上げ。
  • 優遇税制、開発の迅速化などのメリットを享受可能な投資ゾーンを設置。税制面では新規の建物または拡大部分に対するビジネスレート(事業税)の免除、商業・居住施設建設用の土地購入にかかる土地印紙税の免除、年収5270ポンド以下の新規従業員の国民保険料の雇用主負担分を免除。また、指定区域で利用される工場や機械に対しては初年次資産控除の対象として費用の100%を控除。
  • 所得税の最低税率の20%から19%への引き下げを1年前倒し20234月より導入。年収15万ポンド以上の所得者に対する税率を45%から40%に引き下げ、最高税率を40%に。
  • 新たな道路の計画・建設、エネルギーインフラ案件の実行の迅速化、環境アセスメントの合理化などに向けた障壁・規制の撤廃。
  • 失業者・低所得者向けの社会保障給付(ユニバーサル・クレジット)の受給者のうち、定期的な就職指導の対象となる層を拡大。50歳以上の求職者に対しては追加の就職指導の時間を提供。

同相は、借り入れの拡大は認めつつ、実質所得への影響の緩和や企業の保護を通じ短期的な経済成長を支援することで深刻かつ悪影響の大きい不況のリスクは削減できるとした。経済成長を通じて、税収の拡大にもつながるとした。

一方、発表済みのエネルギー価格高騰対策(2022年9月9日記事9月22日記事参照)のみでも10月からの6カ月間で600億ポンド規模と予測されており、同対策を「ギャンブル」とする見方も出ている。

(注)各税制の概要についてはジェトロウェブサイト「税制」も参照。また、各対策に関する英国政府ファクトシートも参照(国民保険料外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます投資ゾーン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます法人税外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます印紙土地税外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます所得税外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(山田恭之)

(英国)

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