バイデン米政権、「AI権利章典」を発表しAI開発の5原則を示す
(米国)
ニューヨーク発
2022年10月05日
米国ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)は10月4日、人工知能(AI)の開発などに当たり考慮すべき原則をまとめた「AI権利章典のための青写真」(以下「青写真」)を発表した。OSTPは、AI技術がイノベーションを促進している一方、職場や医療機関、司法システムなどにおいて、人々が自動化されたシステムによって監視や順位付けされることが増えていると指摘。また、多くのアルゴリズムが偏見を持ち差別的なデータ処理を行っていると問題視している。OSTPは今回発表した「青写真」について、大手テック企業の説明責任を追及し、米国人の市民権を保護する取り組みと位置付けている。
OSTPは「青写真」で、AIを用いた自動化システムを設計、使用、配備する際に考慮すべき5つの原則を示した。概要は次のとおり。
- 安全で効果的なシステム:システムは多様なコミュニティーや利害関係者、専門家と協議の上、開発する。システムを配備する前に試験を行い、リスクを特定・軽減し、システムの監視を行う。これらの保護措置の結果として、システムの配備中止や削除もあり得る。
- アルゴリズムに基づく差別からの保護:システムが人種、性別、年齢などに基づいて不当な待遇をもたらすことがないよう、設計者、開発者、配備者はシステムを公平な方法で使用・設計するための継続的な措置を講じる。
- データ・プライバシー:個人の合理的な期待に合致し、厳密に必要なデータのみを収集する。システムの設計者、開発者、配備者は個人からの許可を取得し、データの収集、使用、アクセス、移転、削除に関する個人の決定を尊重する。個人の同意を求める際は、簡潔で、平易な言葉で理解できる内容にする。健康や仕事などに関わる機微なデータについては、より強い保護措置を講じる。
- 通知と説明:システムの設計者、開発者、配備者は、システム全体の機能と自動化が果たす役割、そのようなシステムが使用されていることの通知、システムに責任を持つ個人・組織などを明確に説明する文書を広く一般に提供する。これらの情報は最新の状態に保ち、重要な使用例や主要機能の変更についてはシステムの影響を受ける人々に通知する。
- 人間による代替、考慮、予備的措置:システムから影響を受ける個人が必要に応じてオプトアウトし、人間による代替手段を選ぶことができるようにする。システムの失敗やエラーが起きた場合などに、人間による考慮と予備的措置による救済を受けられるようにする。
なお、これらの原則は、既存の法令や規則を置き換えたり、修正したりするものではなく、法的拘束力は持たない。一方、OSTPは、同原則がAI製品の開発者や政策担当者、労働者などにより米国社会で広く利用されることに期待を示している。バイデン政権としては、連邦政府機関で各原則を推進していく方針だ。OSTPはファクトシートで、連邦取引委員会(FTC)が進めている、企業の商業的監視やデータセキュリティー慣行に関する規則の制定(2022年8月16日記事参照)などに言及している。
(甲斐野裕之)
(米国)
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