米連邦取引委、個人情報の規則制定に向けパブコメ募集

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月16日

米国連邦取引委員会(FTC)は811日、企業による個人情報の収集や取り扱いに関する規則制定に向け、パブリックコメントを募集すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今後、正式に官報で公示する。今回の規則案制定の事前公示(ANPR)は、FTC5人の委員のうち、リナ・カーン委員長を含む民主党委員3人の賛成により決定された(注1)。

FTCは今回、企業の「商業的監視」と「緩いデータセキュリティー」を取り締まる規則の制定を検討する。商業的監視には、個人情報の収集や分析のほか、収集した個人情報を使った製品・サービスの提供、個人情報の販売などが含まれる。FTCはパブコメで、企業による(1)消費者データの収集、集計、保護、使用、分析、保持、(2)データの移転、共有、販売、あるいはそのほかの方法による不公正または不正な収益化について、新たな規則またはその他の代替手段を講じるべきか意見を求める(注2)。

FTCは規則制定の理由について、これまでFTC法の下でプライバシーやデータの侵害行為に対して法執行を行ってきたが、それだけでは消費者を十分に保護できないと指摘。プライバシーとデータセキュリティーの明確な要件を一律に定め、企業による初回の違反行為に罰金を科す権限をFTCに与えることで、企業の法令順守を奨励できると説明した。カーン委員長は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、企業による大規模な個人データの収集の結果、データ侵害のリスクと被害額が増大しているとして、規則制定の必要性を主張した。

一方、産業界からは、FTCによる規則ではなく、連邦議会による立法措置を求める声が出ている。米国商工会議所のジョーダン・クレンショー副会頭は「まず議会がFTCに(規制)権限を与えるべき」と述べ、FTCのルールは規制のパッチワークを増やすだけだと批判する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回のANPRに反対票を投じたノア・ジョシュア・フィリップス委員(共和党)も声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、反対の理由の1つに、FTCによる権限の逸脱を挙げている。

実際に連邦議会では、包括的なプライバシー保護法案の審議が進んでいる(2022年6月9)。下院エネルギー・商業委員会のフランク・パロン委員長(民主党、ニュージャージー州)らが6月に草案を発表した「米国データプライバシー・保護法案(ADPPA、H.R.8152外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は7月に同委員会を通過した。しかし、法案の最終的な可決のためにカギを握る上院商業科学運輸委員会のマリア・カントウェル委員長(民主党、ワシントン州)が法案の内容に反対を表明(「ワシントン・ポスト」紙電子版622日)。また、既にプライバシー法(2021年10月28日記事参照)を持つカリフォルニア州選出の議員が、ADPPAが州法より優先されることに異議を唱えるなど、法案の可決は不透明となっている。

(注1FTC委員は各政党に所属しており、同じ政党から委員が4人以上選ばれないよう決められている。

(注2)詳細は官報案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を参照。コメントは官報公示日から60日後まで、オンライン(連邦政府ポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)または郵送で受け付ける。FTC98日に、今後の規則制定手順などについて説明するイベントをバーチャル形式で開催予定。視聴希望者は官報に記載のウェブページから視聴可能。

(甲斐野裕之)

(米国)

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