米国で税額控除や年金などインフレ調整による増額手当が相次ぐ

(米国)

ニューヨーク発

2022年10月28日

米国内国歳入庁(IRS)は10月18日、2023年の税額控除額を約7%増額すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。10月13日には社会保障庁(SSA)が2023年の年金支給額を8.7%引き上げると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしており、公的支援のインフレ調整は毎年行われているものの、11月8日の中間選挙前に物価上昇に対応する増額手当が相次いでいる。

IRSによると、2023年に適用する税額控除額は、標準的な夫婦で2022年から1,800ドル増の2万7,700ドル、個人で900ドル増の1万3,850ドルとなる。どちらも約7%の増加だ。月単位では75~150ドル軽減される計算となる。これにより、2023年の限界税率は、夫婦の年収が2万2,000ドル以下の場合は10%、2万2,001~8万9,450ドルは12%、8万9,451~19万750ドルは22%、19万751~36万4,200ドルは24%、36万4,201~46万2,500ドルは32%、46万2,501~69万3,750ドルは35%、69万3,750ドルを超えると37%となる。

また、年金は2023年1月から増額され、8.7%の引き上げ幅は1981年(11.2%)以来で最大だ。米国では、高齢者や障害者など約6,500万人が公的年金を受給しているが(2022年6月14日記事参照)、今回の調整により標準的な受給額は夫婦で年間1,317ドル、月単位で110ドル増額される見込みだ。

一方、高インフレによる負担増はこうした増額手当よりも重くなっている。連邦議会に置かれている合同経済委員会は、一般的な家庭では8月に715ドルのコスト増が生じたとする推計を発表している。賃金は前年比約5%増で推移しているものの、増額手当が加わったとしても、特に低所得者などへの負担が重くなっていると考えられる。

最新の世論調査によると、政党支持率で共和党支持がわずかに高まっている。有権者の主要関心課題のインフレなどへの対応を通じて、民主党が再び支持を取り戻せるか、中間選挙に向けた動向に注目が集まっている。

(宮野慶太)

(米国)

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