企業の国外資金調達上限の調整係数を引き上げ、純資産の2.5倍に拡大

(中国)

北京発

2022年10月26日

中国人民銀行(中央銀行)と国家外貨管理局は10月25日、国外からの資金調達のマクロプルーデンス管理をより完全なものとし、企業や金融機関の国外資金源を増加させてその資産負債構造を最適化するため、企業や金融機関による国外からの資金調達のマクロプルーデンス調整係数を1から1.25に引き上げることを決定したと発表した。

マクロプルーデンス調整係数は、国外からの資金調達限度額(外債枠)を計算する際に用いられるもので、一般企業の場合、同係数が1ならば、外債枠は純資産の2倍となる。今回の係数の引き上げによって、外債枠は純資産の2.5倍に拡大することになる(注1)。

同係数については、国内で新型コロナウイルス感染が拡大していた2020年3月に、企業の資金調達コスト引き下げなどを目的として、1から1.25に引き上げられていたが、2021年1月に1に戻されていた。

在中国日系企業の団体の中国日本商会は「中国経済と日本企業2022年白書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、外商投資企業の業績や資金繰りが必ずしも新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻っていない中で、外債枠が感染拡大前の水準に縮小されていると指摘し、外債枠の再拡大を要望していた。

今回の措置については、足元の人民元安を受けた対応(注2)の一環と指摘する声が多い。中国銀行研究院の王有鑫高級研究員は「マクロプルーデンス調整係数は国際的な資本移動や為替レートを調節する重要なツール」とコメントした上で、「同係数の引き上げによって国外資金調達の上限が引き上げられることで、企業の境外からの資金調達の増加につながり、外貨供給が増えて為替レートの安定化に寄与する」と分析している(「証券時報」10月25日)。

(注1)2017年1月に公布された「全範囲国外資金調達のマクロプルーデンス管理に関する通知」(銀発[2017]9号)によると、一般企業の外債枠の計算式は「純資産×レバレッジ比率(値は2)×マクロプルーデンス調整係数」となっている。

(注2)中国人民銀行は5月15日に外貨預金準備率(金融機関が受け入れる外貨預金のうち人民銀行に預け入れる比率)を1ポイント引き下げ8%としていた(2022年4月28日記事参照)が、9月5日には同準備率を9月15日からさらに2ポイント引き下げて6%にすると発表した。同措置には、外貨の流動性を高めることで人民元の下落抑制につながる効果があると指摘されている。また、先に開催された中国共産党の第20回全国代表大会や第20期中央委員会第1回全体会議(1中全会)を受けて、人民銀行と外貨管理局の党組織が10月24日に開催した会議でも、人民元レートを合理的な均衡水準に基本的に安定させることをあらためて強調した。

(小宮昇平)

(中国)

ビジネス短信 bbd52fdac98f7a0f