バーデン・ビュルテンベルク州送電会社、世界最大級の電力貯蔵施設を建設

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年10月18日

ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク(BW)州の送電会社トランスネットBW(TransnetBW)は10月5日、ドイツ電機大手シーメンスと米国エネルギー会社AESの子会社フルエンス・エナジー(Fluence Energy)と電力系統の負荷を抑える蓄電池電力貯蔵施設の運営で協力すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

電力貯蔵施設は「グリッドブースター(Grid Booster)」と呼ばれるもので、シュトゥットガルトから北70キロのBW州クプファーツェル(Kupferzell)に建設する。クプファーツェルには変電所があり、その施設に併設する。蓄電施設は250メガワット(MW)と世界最大規模で、2025年に完成の見込み。

ドイツでは再生可能エネルギーによる発電割合が増加(2022年9月15日記事参照)、特に北部ドイツでの風力発電の割合が高い。また、ドイツは2030年までに電力消費量の80%以上を再エネとする目標を法制化した(2022年4月18日記事参照)。一方、電力需要は西部、南部ドイツが多く、北部ドイツからの送電が必要となる。ただし、再エネは発電の調整は難しいため、送電系統に負荷がかかり、停電が生じることもある。それを防ぐため、「再給電指令」などで需給調整を行っている。この結果、本来の再エネ発電能力を生かしきれていない。また、これら変動対応費用は電力代に転嫁されるため、電気代上昇の一因にもなっている。

今回計画した電力貯蔵施設では、南部ドイツで電気を貯蔵し、送電系統に電力が足りない場合、送電系統に数ミリ秒以内に最大1時間、電気を供給する。送電系統が通常どおり運用している場合、電力貯蔵施設は電気を充電する。ドイツ国内で再エネのさらなる増加が見込まれる中、このプロジェクトがドイツの発電・送電を効率化し、電力代も抑制する打開策となる可能性がある。

トランスネットBWは、2019年策定の「系統開発計画2030」とエネルギー経済法で、「グリッドブースター」のパイロット施設を建設することを義務付けている。クプファーツェルの電力貯蔵施設が他のプロジェクトの模範となる可能性もありそうだ。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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