ウクライナ、軍事侵攻による環境被害を360億ユーロと推定

(ウクライナ、ロシア、EU)

欧州ロシアCIS課

2022年10月07日

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、環境面にも深刻な被害をもたらしている。ウクライナのルスラン・ストリレツ環境・天然資源相は10月3日、欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会が開催したオンラインでの意見交換会において、軍事侵攻によるウクライナ国内での環境被害について説明した(会議の動画配信外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

ストリレツ環境相によれば、軍事侵攻の開始以来、ウクライナ国内の環境被害は総額360億ユーロに上る。内訳は、土壌への被害が114億ユーロで、大気汚染による被害が246億ユーロだという。また、これまでに2,000件を超える環境被害が確認されたとした。

気候変動に与える影響は無視できない。軍事侵攻により約3,100万トンの二酸化炭素(CO2)が大気中に排出されたという。ロイター通信(10月3日)によれば、これはニュージーランドの年間排出量とほぼ同水準に当たる。また、軍事侵攻によって破壊された国内のインフラ施設や建物の復興にあたり、約7,900万トンのCO2が排出される可能性があるとした。

個別の天然資源をみると、現時点で45万ヘクタールの森林がロシア軍に占拠されているという。ウクライナ軍はすでに245万ヘクタールの森林を奪還したが、森林は火災などにより深刻なダメージを負っており、回復には数十年を要すると述べた。

水資源の損失額は790万ユーロに上り、497の水資源関連施設が被害を受け、または破壊されたとした。灌漑、排水などの施設の復旧には77億1,000万ユーロが必要となる見込みだ。

ロシア軍は、ウクライナ国内における2,000を超えるエネルギー資源、金属、鉱物の埋蔵箇所を占拠しており、額にして12兆7,000億ユーロに上るとした。

また、ストリレツ環境相は、2022年11月6日から18日にかけてエジプトで開催される国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)(2021年11月22日記事参照)において、ウクライナが、軍事侵攻による環境被害の評価に関するグローバルプラットフォームの創設を提案する予定だと発言した。

(宮下恵輔)

(ウクライナ、ロシア、EU)

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