在北米企業、ドル高による減益広がる、第3四半期は343億ドル押し下げ
(米国、カナダ、メキシコ)
ニューヨーク発
2022年10月26日
米国コンサルタント会社のキリバは10月18日、ドル高によって在北米(米国、カナダ、メキシコ)企業の2022年第3四半期(7~9月)の利益が343億ドル押し下げられたとするレポートを公表した。ドル高は20年ぶりの水準に達しており(2022年10月4日記事参照)、ユーロや円を含む各通貨に対してドル高が進んでいる。ドル高は一般的に、輸入には有利に作用する半面、輸出競争力やグローバル企業が利益をドルに為替変換する際に不利に作用する。今回レポートは、ドル高の台頭が在北米企業にマイナスの影響を与えていることが顕在化していることを示したかたちだ。
レポートでは、海外からの収益が15%以上の北米および欧州の上場グローバル企業1,200社の為替による第3四半期決算への影響を分析した。このうち為替変動の影響があったとされるのは286社で全体の24%、マイナスの影響があったのは243社で、そのうち在北米企業が235社とそのほとんどを占めた。在北米企業への影響額は343億ドルの押し下げで、前期(147億ドル)から2倍以上、前年同期比(23億ドル)では約15倍の額にまで膨らんでいる。1社当たりの平均影響額は1億5,500万ドルの押し下げで前期から約2倍に増加した。影響の大きかった産業としては、大きい順に機械・貿易・流通、専門サービス、ヘルスケア、バイオテック・医薬品、化学の順となっている。
連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急速に続ける中、今後はさらにドル高のマイナスの影響が顕在化する可能性が大きい。動画配信サービスのネットフリックスは2022年第4四半期(10~12月)の売上高見通しを0.9%増としたが、為替の影響がない場合は9%増と、為替による押し下げの影響を大きく見込んでいるほか、日用品大手のP&Gは2023年売上高見通しについて、為替の影響で13億ドル押し下げられるとして、2022年7月下旬の見通しより4億ドル下方修正している(CNBC10月19日)。米国のジョー・バイデン大統領はドル高について、「ドル高は懸念していない。他国(の経済状態)を懸念している」と述べるなど(ブルームバーグ10月15日)、バイデン政権は現在のドル高を容認する構えだ。しかし、米国のグローバル企業は一定の政治的影響力があることに加え、世界経済のドル高による悪影響が脆弱(ぜいじゃく)な新興国を中心にさらに膨らめば、ひいては米国経済にも悪影響が及ぶ可能性もあり、ドル高修正が今後ありうるか、米国当局などの動向が注目される。
(宮野慶太)
(米国、カナダ、メキシコ)
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