「経済安全保障のためのサプライチェーン安定化支援基本法」を発議
(韓国)
ソウル発
2022年10月19日
韓国企画財政部は10月17日、サプライチェーン安定化やリスク管理に関する政府の組織体系の整備と、サプライチェーン安定化に貢献する企業を支援する法的根拠、基金の設置などを規定した「経済安全保障のためのサプライチェーン安定化支援基本法」が発議されたと発表した(注1)。基本法の全体像は以下のとおり。
サプライチェーンのリスク段階別の安定化対策などの一般的事項と非常時の対応体系を規定し、各部局(省庁)の役割を明確化する。サプライチェーン全体の司令塔として、大統領直属の「サプライチェーン安定化委員会」を設け、企画財政部が全体調整の役割を担う。各部局は基本法に基づいて経済安全保障品目や安定化先導事業者の認定などの実務を担う。
サプライチェーンリスク管理については、各部局の早期警報システム(EWS)と連携し、リスクの兆候がある場合、早期安定化のための検討を行う。また、予防措置として、(1)「経済安全保障品目・サービス」(注2)を指定し、(2)安定化に寄与する民間企業を「安定化先導事業者」として認定し、(3)財政・税制支援、「サプライチェーン安定化基金」による支援(注3)を通じて官民協力体制を構築する。緊急時は当該品目を「危機品目」に指定し、危機対策本部の設置など政府横断的な対応に移行する。
経済安全保障品目は、基本法に基づいて「危機品目」「早期警報モニタリング品目」「経済安全保障品目」に分類する。全体の輸入品目から需給や価格が不安定となって国内経済に重大な影響を与える品目を「危機品目」に指定し、このうち、年間の輸入額が100万ドル以上、かつ特定国への依存度が50%前後の品目を「早期警報モニタリング品目」、さらに「早期警報モニタリング品目」のうち、部局横断的な管理が必要な核心品目を「経済安全保障品目」にそれぞれ指定する(注4)。
(注1)国会企画財政委員会のリュ・ソンゴル議員の発議。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が6月に発表した「新政権の経済政策方向」でも、グローバル・サプライチェーン・リスクに対応するための制度整備が含まれている(2022年6月21日記事参照)。
(注2)「経済安全保障品目」とは、国民生活や国家経済の安定的な運営のため、部局横断的に管理が必要な重要品目、「経済安全保障サービス」とは、経済安全保障品目の生産・流通に支障を生じる恐れのある物流サービスや基盤施設などを指す。
(注3)輸出入銀行が政府保証債を発行して基金を造成する。経済安全保障品目の確保、輸入先の多様化、国内外の生産基盤の拡充のための融資、資産買収、出資、債務保証などを行う。
(注4)政府は、これまでも2021年11月に発生した尿素水不足を機に、「経済安全保障タスクフォース」を設置し、200品目の経済安全保障品目指定や需給対策を行ってきた(2021年11月11日記事参照)。
(当間正明)
(韓国)
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