共産党代表大会報告、中国メディアは「中国式現代化」への言及などに注目

(中国)

北京発

2022年10月19日

10月16日に開幕した中国共産党第20回全国代表大会での習近平総書記(国家主席)の報告(2022年10月18日記事参照)について、中国メディアでは「中国式現代化」(注1)に注目する報道が多くみられた。「環球時報」は、報告で「中国式現代化」に言及したことは、世界に対して今日の中国の発展の道のりを明確に示すもので、同概念は第18回全国代表大会以来の中国共産党の理論や実践の上での革新的なブレークスルーだとその意義を評価している(「環球時報」10月16日)。

また、報告で「内需拡大戦略の実施と供給サイドの構造改革の深化を組み合わせて国内大循環(注2)の内生的動力や信頼性を高める」とされたことについて、中国国際経済交流中心の魏建国副理事長は、内生的動力や信頼性はハイレベルな自立自強によって示されるとの見方を示した。その上で、ハイレベルな自立自強とは、主に自らの市場と生産要素を用い、他者に依存せずに自主イノベーションを行う一方、グローバルなイノベーションネットワークの協力に参加し、その中でよりハイレベルな自主イノベーションを実現することだと指摘した(「新京報」10月17日)。

科学技術に関する言及の中では、「重要なコア技術の攻略戦に断固勝利する」との表現が入った。中国科学院大学公共政策管理学院の王海燕副院長は、同表現はボトルネックとなる技術を突破する決心を示したものであり、今後重要なコア技術の研究開発方式や資金面でのサポートなどに関する重要な取り組みや制度改革がなされるとの見通しを示した(同10月17日)。

分配や機会の公平性に関する表現に着目する報道もみられた。浙江大学の李実氏は、「財産の蓄積メカニズムを規範化する」という表現が今回初めて提起されたと指摘した上で、財産が蓄積されるスピードが非常に速くなっており、財産の蓄積メカニズムを規範化し、富の分配における公平性を高めるべきと指摘した。また、国務院発展研究中心の馮文猛氏は「機会の公平は所得分配改善のための重要なチャネルで、共同富裕にも呼応するものだ。その実現には平等な雇用を妨げる不合理な制限や雇用差別を解消する必要がある」とコメントしている(「中国新聞網」10月17日)。

このほか、カーボンニュートラル目標(注3)に関して、中国の状況やエネルギー安全保障、経済の安定の必要性を踏まえて、「石炭のクリーンで高効率な利用」などの表現が盛り込まれたとの指摘もみられた。

(注1)報告では、今後、中国共産党の中心的任務は全国各民族人民を団結させ指導して社会主義現代化強国を全面的に建設し、第2の100年奮闘目標(中華人民共和国建国100周年にあたる2049年までに社会主義現代化強国の建設を完了すること)を実現し、中国式現代化によって中華民族の偉大な復興を全面的に推進すること、としている。なお、報告の中で、「中国式現代化」とは、中国共産党が率い、各国の現代化と共通の特徴を持つとともに、中国の国情に基づく特徴を持つとされている。また、人口規模が巨大であり、人々全体がともに豊かになり、物質文明と精神文明が調和し、人と自然が調和・共生し、平和的発展の道を歩む現代化だと説明されている。

(注2)「国内大循環」については、「第14次5カ年(2021~2025年)規画と2035年までの長期目標」において、「生産、分配、流通、消費について需要が供給を牽引し、供給が需要をつくり出すハイレベルの動的均衡により、国民経済の良好な循環を促進する」と記述されている。

(注3)中国は2030年までのカーボンピークアウト、2060年までのカーボンニュートラル達成を表明している。報告では、カーボンピークアウトとカーボンニュートラルを積極的かつ着実に推進し、自国のエネルギー資源の賦存状況に基づき、計画的に段階を追ってカーボンピークアウトを実施し、エネルギー革命を踏み込んで推進し、石炭のクリーンで高効率な利用を強化し、新型エネルギーシステムの規画・建設を加速し、気候変動に関するグローバルガバナンスに積極的に参加・対応するなどとされた。

(小宮昇平)

(中国)

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