関税庁が越境ECの利便性向上案を公表

(韓国)

ソウル発

2022年10月11日

韓国の関税庁は10月5日、「電子商取引関連の国民の利便性向上および輸出強化案」を公表した。越境EC(電子商取引)に係る利用者からの問い合わせや苦情、EC事業者からの提言などをもとに、(1)国民の利便性向上、(2)消費者保護、(3)越境ECを用いた輸出の支援、(4)制度・インフラ整備の4分野と、20の課題改善に向けた方向性を整理した。このうち、(1)と(2)についての具体的な事例は次のとおり。

「国民の利便性向上」では、本来は少額免税制度(注1)で課税対象外にもかかわらず、合算課税制度(注2)が適用され、関税が賦課される(注3)といった問題を解消するために、「少額の貨物の入港日が同日」という合算課税の適用条件を削除する。一方、販売目的の輸入にもかかわらず、個人利用目的として輸入した場合は、処罰の対象とする(注4)。また、高額商品などで関税の納付が必要な場合、仮想口座(バーチャル口座)(注5)がないため不便だとの苦情が多いことから、関税の照会、納付(仮想口座の提供)、返品の際の税還付申請のサービスを提供するスマートフォンのアプリ(モバイル税金納付・還付システム)を構築する。

「消費者保護」では、個人通関固有符号(注6)の盗用により、利用者が実際に購入した製品と当該利用者が購入していない製品が同時に入港し、合算課税の対象または通関で保留措置となるケースが増えているといった問題がある。そこで、ECサイトの会員登録情報が個人通関固有符号の発給情報と一致するか自動検証するシステムを導入し、他人名義の個人通関固有符号を利用した者は、関税法の改正を通じ1,000万ウォン(約100万円、1ウォン=約0.1円)以下の罰金を科す。

(注1)個人使用の小口貨物で、価格が150ドル以下の場合、関税と付加価値税が免除となる制度(貿易投資相談Q&A参照)。

(注2)現状、少額免税制度の悪用防止のため、1日に複数の小口貨物を輸入する場合は、輸入申告の対象となる(注1の貿易投資相談Q&A参照)。

(注3)個人使用目的で同じECサイトを通じ、1日ごとにそれぞれ購入したものの、中国の都市封鎖の影響で、輸出が同じ日になった場合など。

(注4)ただし、個人使用目的で少額免税制度を利用して輸入したものの、誤注文や中古品を処分するなどの理由で再販する場合に限り、免税適用。

(注5)事業者が法人口座にひもづけて金融機関が割り当てる振込専用の口座。入金処理の照合の円滑化につながる。

(注6)関税庁が発給する個人識別符号。取得することで通関の迅速化などが可能。アルファベットの1文字と数字の12文字で構成。

(当間正明)

(韓国)

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