ADB、太平洋島しょ国の2022年経済成長予測を上方修正

(オセアニア)

アジア大洋州課

2022年10月18日

アジア開発銀行(ADB)は9月21日、「2022年アジア経済見通し改定版PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した(2022年9月30日記事参照)。

ADBは、太平洋島しょ国全体(13カ国、注)の2022年の実質GDP成長率を前年比4.7%と予測、2022年4月時点の3.9%から0.8ポイント引き上げた。しかし、国別でみると、上方修正された国が13カ国中5カ国にとどまり、反対に下方修正された国が6カ国あるなど、国によって経済回復の度合いに差が出た(横ばいは2カ国)。実質GDP成長率が上方修正された国のうち、フィジーは前年比11.7%(4.6ポイント増)、クック諸島は10.5%(1.4ポイント増)と2桁増となった。ADBは、海外からの観光客の回復をその要因として挙げている。パプアニューギニアは、鉱山(銅、金)の再開や、石油および液化天然ガスの増産により輸出が回復したことで、2022年が3.5%、2023年が4.9%とそれぞれ上方修正された。このほか、パラオも2022年が4.6%と高成長だが、前回予測からは4.8ポイント下方修正された(添付資料表1参照)。

一方、ADBは、2022年の成長率予測が下方修正された6カ国のうち、マーシャル(マイナス1.2%、2.4ポイント減)とサモア(マイナス5.3%、5.7ポイント減)はマイナス成長に転落すると予想、新型コロナ感染症対策として実施していた国境封鎖の長期化と国内での感染拡大により経済成長が減速したと分析した。トンガについては、2022年1月に発生した火山噴火と津波の被害が前回予測時よりも大きく、農産物の生産と輸出に悪影響が出るとして、2022年の成長率をマイナス2.0(0.8ポイント減)に引き下げた。

ADBは2023年の太平洋島嶼国の成長率を5.5%と予測した。前回予測と比べて上方修正した国はパプアニューギニアとトンガの2カ国のみで、それ以外の国については横ばいまたは下方修正とした。マーシャル諸島についてはマイナス成長に陥ると予測している。

太平洋島しょ国の2022年インフレ率は6.2%に上方修正

太平洋島しょ国のインフレ率については、2022年が前年比6.2%、2023年は4.8%と予測した。2022年4月の予測からそれぞれ0.3ポイント、0.1ポイント引き上げた(添付資料表2参照)。ADBはインフレ率の上方修正について、ロシアのウクライナ侵攻による世界的な価格上昇が影響したと分析した。国別にみると、13カ国中7カ国でインフレ率の予測が引き上げられた。中でも、マーシャルとパラオは10%を超え、ミクロネシアやツバルでも大幅な物価上昇を予測した。ADBは、小規模な島しょ国では輸入への依存度が高く、国際的な価格上昇による影響を受け、インフレ率が上昇したと分析する。一方、キリバスやナウルでは、政府の補助金や減税、関税の停止などが燃料や光熱費の価格を抑えていると分析し、インフレ率の予測を横ばいとした。

(注)ADBは太平洋島しょ国として14カ国を挙げているが、ニウエについては予測値を公表していないため13カ国とした。

(糸川更恵)

(オセアニア)

ビジネス短信 9f0388d3c095836b