インフレ加速で相次ぐ賃金見直し、100%超の賃上げ合意の業種も

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年10月31日

アルゼンチンではインフレが加速しており(2022年10月19日記事参照)、業種別労働組合による賃上げ要求が激化している。多くの業種は、3月から5月にかけて段階的な賃金引き上げで労使が合意していたが(2022年5月29日記事参照)、7月に物価上昇が加速したため、労働組合はこれら合意の見直しを求めている。

政府が編成した2023年国家予算案によれば、2022年のインフレ率は95.0%に達する見通し。民間エコノミストらの主要経済指標の予測値をまとめている中央銀行による調査(REM)の最新版によると、2022年のインフレ率は100.3%と、3桁に達すると予測している。REMによる2023年のインフレ率の予測値は90.5%と、物価は高止まりしたままだ。

各労働組合や複数の現地報道によれば、既に賃上げ率の見直しで合意した組合、現在交渉中、または見直しを強く求めている組合は以下のとおり。

  • ガラス関連産業労働者組合:10月から12月にかけて20%、2023年1月から3月にかけてさらに20%の賃上げで合意。これによって2023年3月時点の賃上げ率は前年比112.4%に達する。
  • 造船労働組合:2022年10月から2023年3月にかけて40%の引き上げで合意。2023年3月時点で前年比110%に達する。
  • 保険外交員組合:2023年1月時点で前年比109.75%の賃上げで合意。
  • 油製造業組合:2022年12月時点で前年比98%の賃上げで合意
  • 銀行員組合:2022年5月に60%の賃上げで合意していたが、9月に行った見直しで2022年12月時点の賃上げ率は前年比94.1%で合意。
  • 商業労働組合:既に合意していた2023年3月までの賃上げ率を2022年11月に前倒しし、2023年1月に再び見直しを行う予定。
  • タイヤ労働者組合:5カ月間の交渉と大規模ストライキを実施した結果、インフレの進展次第で上乗せ調整の保証条項付きで66%の賃上げ、さらに10万ペソ(約10万円、1ペソ=約1円)の特別ボーナスの支給で合意。
  • 建設労働組合:2022年8月に76%の賃上げで合意していたが、90%以上の賃上げを求める。
  • 冶金(やきん)労働組合:既に65%の賃上げで合意に達していたが、3桁増の見直しを交渉する予定。
  • トラック運転手組合:131%の賃上げを求めており、交渉が難航すれば全国的なストライキを実施すると圧力をかけていたが、2022年10月27日付で107%の賃上げで合意した。2022年11月1日から2023年10月31日までの間に4回に分けて賃上げし、2022年末には10万ペソの特別ボーナスも支給する。
写真 アルゼンチン労働・雇用・社会保障省ビル前(ジェトロ撮影)

アルゼンチン労働・雇用・社会保障省ビル前(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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