欧州委員会、ドイツのグリーン水素プロジェクト2件への補助を承認

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年10月25日

ドイツの経済・気候保護省(BMWK)は10月5日、欧州委員会から2つの水素プロジェクトへの国家補助の承認を得たと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。BMWKは、同プロジェクトを「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の枠組みで実施する。またドイツでは、水素関連の多数のプロジェクトが計画されている状況だ(2021年6月10日記事参照)。

国家補助の承認を得た1つ目のプロジェクトは、ドイツ鉄鋼メーカーのザルツギッターの鋼板製造部門が実施するグリーン鉄鋼の生産だ。2033年までに、ドイツ北部ニーダーザクセン州ザルツギッターにある工場での鉄鋼生産を、二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しない粗鋼生産方式へ転換する。具体的には、直接還元装置2基と電気炉3基を設置して現在の高炉を置き換え、コークスではなく水素を利用して還元する生産方式に更新する。また、新設する100メガワット(MW)規模の電解槽では年間約9,000トンのグリーン水素(注1)を生産し、直接還元装置で還元ガスとして利用する。電解槽、直接還元装置、電気炉は2026年に稼働の予定だ。設備完成後には年間で360万トンのCO2を削減できる見込みだ。連邦政府は最大7億ユーロ、ニーダーザクセン州は最大3億ユーロを助成する。なお、ザルツギッターは10月17日、電解槽メーカーであるサンファイアとの協力事業でグリーン水素の大量生産に成功したことも発表している。

2つ目は、ドイツ化学大手BASFのラインラント・プファルツ州ルートビヒスハーフェン工場におけるプロジェクトだ。化学製品の製造工程の脱炭素化や輸送部門における水素利用の促進を目的とする。プロジェクトで設置される電解槽は54MW規模で、年間約5,000トンのグリーン水素と4万トンの酸素を生産可能。2025年に稼働の見込みだ。現在使用されているのはグレー水素(注2)だが、その代替としてグリーン水素を使用する。化学製品の製造において年間で最大4万5,000トンのCO2が削減でき、同電解槽を15年間運転することで、56万5,305トンのCO2排出量の削減を見込む。同プロジェクトには合計で1億3,400万ユーロが助成される。

ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は、今回承認された2件のプロジェクトについて、「気候中立の産業に向けた重要な基礎になるものだ。特に現在の危機的状況において、これまで以上に重要なシグナルだ」と述べ、エネルギー改革の加速化が現在のエネルギー危機への正しい答えだとの認識を示した。

(注1)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程でCO2を排出しない。

(注2)化石燃料を原料とし、生成過程でCO2が大気中に放出される水素。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ)

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