BMWなどのコンソーシアム、トラック用水素エンジンの開発に着手

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年10月12日

ドイツ自動車大手BMWグループは928日、トラック向け水素エンジン開発プロジェクトを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。プロジェクト名は「HyCETHydrogen Combustion Engine Trucks)」で、期間は4年間。

プロジェクトに参加する企業は、取りまとめ役のBMWのほか、エンジンメーカーのドイツ(Deutz外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、物流企業のDHLフレイト(DHL Freight外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、水素エンジンのスタートアップ企業のキーユー(KEYOU外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、エネルギー企業のトタルエナジーズ・マーケティング・ドイチェラント(TotalEnergies Marketing Deutschland外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、商用トラックも手掛けるボルボグループ(Volvo Group外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの計6社。

プロジェクトの目的は、交通・物流部門における水素エンジン搭載トラックの持続可能性を検証すること。水素エンジン自体の技術開発に加え、公共水素充填(じゅうてん)ステーションなどの必要なインフラも課題とする。プロジェクト総額は1,950万ユーロで、うち、1,130万ユーロを連邦デジタル・交通省が助成する。同省は加えて、トラック向け水素充填ステーション2カ所の建設に計570万ユーロを助成する。

プロジェクトの具体案としては、18トンの水素エンジン搭載トラックを2台、40トンの水素エンジン搭載トラックを2台開発し、BMWやドイツのロジスティクス業務でトラックを実際に使用する実証試験を行う。ドイツは既に7.8リッターの水素エンジンを開発しており、定置型発電機に使用するパイロットプロジェクトで実用性を実証済み。18トントラックにはドイツの同水素エンジンを搭載する。一方、キーユーはボルボと13リッターの水素エンジンを開発、40トントラックに搭載する予定だ。またトタルエナジーズは、今回のプロジェクトのため、ライプチヒ(ザクセン州)とニュルンベルク(バイエルン州)に、水素充填ステーションを建設する。なお同社は、2030年までにドイツおよび周辺国に、最大150カ所の水素充填ステーションを建設予定だ。DHLフレイトがトラックを運行する。

今回のプロジェクトでは、水素エンジン搭載トラックを実際の環境下で走らせることで、他のトラック用駆動と比べての水素エンジンの長所と短所を明らかにする。欧州自動車工業会(ACEA)によると、2021年にEUで運行した中・大型トラックの95.8%はディーゼル車で、電動トラックは0.5%にすぎない。温室効果ガス削減は商用車でも今後さらに求められていくが、電動トラックか、燃料電池トラックかで、ドイツの主要メーカーの将来の方向性に対する見方は異なっている(2021年5月17日記事参照)。今回の動きは、それらに加え、水素エンジンについても技術開発を進めて可能性を模索しようとするものだ。

(高塚一)

(ドイツ)

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