上院がTPP11承認、政府は批准前にサイドレターへの署名推進

(チリ)

サンティアゴ発

2022年10月13日

チリ上院は10月11日、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)の承認法案を賛成27、反対10、欠席1で可決した。これにより、2019年4月に下院が可決してから3年半、同法案が国会に提出されてから約4年をかけて国会審議が終了した。同法案は9月28日の約3年ぶりとなる審議再開(2022年10月3日記事参照2022年10月7日記事参照)を経て、可決に至った。

投票では、現政権を構成する左派連合(Apruebo Dignidad)の上院議員が反対票を投じたものの、否決に必要な議席数に足らず、野党が賛成票を投じたことで可決された。しかし、政府は、懸念材料となっているTPP11第9章第B節「投資家と国との間の紛争解決(ISDS)」メカニズムについて、チリは適用しないとするサイドレター(協定付属文書)への署名を他の参加国に要求しており、サイドレターへの承認が得られるまでTPP11法案を批准しない方針を明らかにしていた。上院での承認を受け、アントニア・ウレホラ外相は「ガブリエル・ボリッチ大統領は大統領権限の範囲内でTPP11を批准する前にサイドレター戦略を推進することを決定した」と発言。TPP11批准までにかかる時間について「数年ではなく数カ月であることを願っている」としつつも、サイドレターについてはそれぞれの国で政治的、技術的な議論のリズムが異なるため、答えかねるとコメントした。

TPP11の批准時期が不透明ではあるものの、経済界からは上院での承認を祝福する声が上がっている。生産商工連合(CPC)のフアン・スティル氏は「TPP11は、チリが署名した協定の中で環境問題や労働問題、ジェンダー問題、中小企業に焦点を当てた最も包括的な協定で、チリに複数の利益をもたらす」とコメントしている。

(岡戸美澪)

(チリ)

ビジネス短信 5ea95566a8c194bf