TPP11批准はまたも先延ばしに

(チリ)

サンティアゴ発

2022年10月03日

チリの上院で9月28日、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)承認法案の審議が再開された。同法案は、最終段階の上院本会議での投票を残すのみとなっていたが、長らく審議が停滞していた。上院全50議席のうち、中道右派および右派の勢力が半分の25議席を占めており、中道左派の一部議員も賛意を示していることから、法案の可決に必要な過半数の獲得については確実視されている。

一方で、左派政党が中心の現政権は、以前よりTPP11法案の承認には消極的な姿勢を示しており、ガブリエル・ボリッチ大統領も、政府のプログラムには同法案の推進は含まれていない、と発言している。しかし、現政権は上院での法案可決が目前に迫った状況に鑑み、反対派の懸念材料となっている、TPP11第9章第B節「投資家と国との間の紛争解決(ISDS)」メカニズムをチリは適用しないとするサイドレター(協定付属文書)への署名を、他の参加国に要求している。アナ・リヤ・ウリアルテ大統領府長官は、9月28日時点で、他国との交渉の進捗状況についてニュージーランド、オーストラリア、カナダなど一部の国から回答が得られていないと述べている。政府は、サイドレターへの承認が得られるまでTPP11法案を批准しない方針を明らかにしている。この政府の動きに呼応するように、28日中に予定されていた上院本会議での投票は、与党の上院議員らの要請によって延期されることとなった。政府は他の参加国との合意には約2カ月を要するとコメントしており、またもや投票は先延ばしされた。

経済界を代表する生産商工連合(CPC)のフアン・スティル氏は「TPP11は国の発展にとって重要なもので、特に日本市場などへの参入時に関税上の利点をもたらす」と発言。法案に反対する左派連合(Apruebo Dignidad)の姿勢を批判している。

(岡戸美澪)

(チリ)

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