バイエルン州でグリーン水素プロジェクト進む

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年10月05日

ドイツ南部バイエルン州では、複数の水素関連プロジェクトが具体的に進んでいる。同州の経済・開発・エネルギー省は9月15日、ミュンヘンの北約75キロに位置するプフェッフェンハウゼンで、グリーン水素(注1)製造プラントの建設を開始したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

設置する水電解装置は5メガワット(MW)級。再生可能エネルギー100%由来の電力を使用し、2023年から年間約440トンのグリーン水素を製造する。使用する電力に関しては、10MW規模の太陽光発電所が2023年に稼働、さらに風力発電設備2基も設置予定だ。製造した水素は、地域の近距離交通機関向けに、施設から200キロ圏内の水素充填(じゅうてん)ステーションに供給する。これにより二酸化炭素(CO2)を年間4,500トン以上削減できる見込み。

上記施設で製造した水素は、同地域に建設予定の「水素技術・活用センター(WTAZ)」にもパイプラインで直接供給する計画だ。WTAZは、デジタル・交通省が2021年4月にモビリティー向けの水素技術活用候補地として、デュイスブルク、ケムニッツと並び、プフェッフェンハウゼンを選定した際にプフェッフェンハウゼンが示したもの。水素実用化を目指すコンセプトで、2022年5月にはプフェッフェンハウゼンでの建設は可能との事前調査結果が出ている。今後、プフェッフェンハウゼン周辺地域がモビリティー分野の水素活用技術の一大集積地となる可能性がある。

ドイツ重電大手シーメンスも9月14日、ミュンヘンの北約250キロに位置するブンジーデルで、ドイツ最大級のグリーン水素製造プラントが稼働開始したと発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。同社が2021年7月に発表していたもので(2021年7月29日記事参照)、8.75MWの固体高分子(PEM)型水電解装置(注2)が稼働、年間最大1,350トンのグリーン水素を製造する。これにより年間最大1万3,500トンのCO2を削減できる。

製造した水素は原則として同拠点から150~200キロ圏内のガラス・窯業、運輸業、自動車部品関連企業などに供給予定。水素輸送はトラックで行う。2023年にはブンジーデルに水素充填ステーションが稼働する見込みだ。シーメンスによると、同拠点の水電解装置を将来的には17.5MW規模まで拡大する可能性がある。

(注1)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素を排出しない。

(注2)水素の原子核を移動させることができる固体高分子膜(Polymer Electrolyte Membrane)を用いた水電解で、変動電力に対する柔軟性が高く、比較的コンパクト化が容易という特徴がある。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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