バイデン米政権、太平洋島しょ国との首脳会合主催、初の地域戦略も発表

(米国、太平洋島しょ国)

ニューヨーク発

2022年10月04日

米国のバイデン政権は9月28~29日、首都ワシントンでは初となる米国・太平洋島しょ国首脳会合を主催した。また、島しょ国地域に特化した地域戦略として初の「太平洋パートナーシップ戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。

首脳会合後に共同で発表された「米国・太平洋パートナーシップ宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」では、米国と島しょ国間のパートナーシップ強化、島しょ国の地域主義の強化、気候変動対策の協力、島しょ国の経済成長と持続可能な開発を前進させる協力の強化など、11項目の関係強化に取り組むとうたっている。米国側の関与強化策をまとめた「太平洋パートナーシップ戦略(ファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」では、それらを後押しするために、島しょ国における米国の公館を現在の6拠点から9拠点に増やすことや、米国際開発庁(USAID)の代表部をフィジーに再設置すること、日本と米国、オーストラリア、インドによるクアッド(QUAD)やASEANなどの地域枠組みとの連携強化、「ブルーパシフィックにおけるパートナー(PBP)」(2022年9月26日記事参照)を通じた支援強化などが盛り込まれている。政権はさらに「21世紀の米国・太平洋島しょ国パートナーシップのためのロードマップ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」と称するファクトシートで具体的な施策を列挙している。例えば、米国がこの度、クック諸島とニウエを主権国家として承認したことで拡大する外交的関与や気候変動危機への対応、貿易・投資対話枠組みの創設などのために、8億1,000万ドル以上を今後拠出するとしている。貿易・投資対話枠組みについては、米国通商代表部(USTR)のサラ・ビアンキ次席代表が島しょ国の首脳らと会談を行い、2022年末までに創設する考えを表明している。USTRは両国・地域間の貿易促進に向けて、現在は失効中だが一般特恵関税制度(GSP)が復活した場合に、適格な島しょ国に地域単位でGSPを認める可能性も検討しているとしている。

米国が島しょ国への関与を強化する背景について、「太平洋パートナーシップ戦略」は、島しょ国は米国を広大なインド太平洋と連結させる地域であり、米国の繁栄と安全は同地域が自由で開かれていることにかかっていると強調している。その上で、米国のこれまでの関与を振り返りつつ、気候変動や違法・無報告・無規制(IUU)漁業のまん延、新型コロナウイルス感染拡大とそれにより減退した観光業、中国による圧力や経済的威圧行為といった喫緊の課題を受けて、米国は関与を刷新する必要があると説いている。ジョー・バイデン大統領も首脳会合で「今日、太平洋島しょ国とその人々の安全は、われわれにとってかつてないほど重要になっている。米国と世界の安全は太平洋島しょ国の安全にかかっている」と強調した。

(磯部真一)

(米国、太平洋島しょ国)

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