米国で「ブルーパシフィックにおけるパートナー」外相会合を初開催

(米国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、英国、太平洋諸島)

ニューヨーク発

2022年09月26日

「ブルーパシフィックにおけるパートナー(PBP)」外相会合が922日、米国ニューヨークで開催された。会合には、国連総会に出席するために訪米した林芳正外相や米国のアントニー・ブリンケン国務長官のほか、オーストラリア、ニュージーランド、英国、太平洋島しょ国・地域などの代表が出席した(注1)。

PBPは、日米とオーストラリア、ニュージーランド、英国が太平洋島しょ国への支援を効果的かつ効率的に行うために、各国のアプローチを調整する目的で立ち上げたイニシアチブ(2022年7月13日記事参照)。6月の高級実務者会合で設立に一致し、今回が初の外相レベルでの会合となった。

会合後に発表された共同声明(日本語PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、PBPが太平洋諸島フォーラム(PIF、注2)の「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」や既存の太平洋地域の取り組みによって導かれるものであることを強調した。会合では、同戦略に沿ってPBPで取り組む6つの分野として(1)気候変動、強靭(きょうじん)性、適応および災害、(2)安全性があり、抗たん性(注3)のある技術および連結性、(3)海洋および環境の保護、(4)人を中心に置いた開発、(5)資源および経済開発、(6)政治的リーダーシップおよび地域主義、について議論した。最初の具体的な取り組み候補として、太平洋地域における人道支援のための備蓄倉庫支援などが検討されている。

米国は92728日に首都ワシントンで太平洋島しょ国との初の首脳会合開催を予定するなど、太平洋地域との関係強化を図っている(2022年9月5日記事参照)。これは同地域での中国の影響力拡大に対応する動きとみられている。米国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は外相会合後に記者団に対し、一部の太平洋島しょ国のリーダーが中国の太平洋地域に対する影響に懸念を持つことに言及した一方で、同地域の米国への関与については、気候変動など太平洋島しょ国の優先課題に焦点を当てる考えを示した(ロイター922日)。

日米韓外相会合も開催

林外相は922日、ブリンケン国務長官、韓国の朴振(パク・チン)外相との会合も行った。外務省の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、会合では、核実験を始めとする北朝鮮によるさらなる挑発行為への対応や北朝鮮の完全な非核化に向けた今後の対応について意見のすり合わせを行った。その上で、日米同盟・米韓同盟の抑止力を高めるとともに、日米韓の安全保障協力を推進していくことで一致した。

また、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取り組みや、経済安全保障といったグローバルな課題についても意見交換した。会合後に発表した共同声明(日本語PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、太平洋島しょ国のパートナーのニーズおよび優先事項を支援するという共通のコミットメントを確認。ASEANの一体性および中心性への支持、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」(注4)への支持も再確認した。

(注1)太平洋島しょ国・地域からは、フィジー、フランス領ポリネシア、キリバス、ナウル、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、マーシャル、サモア、ソロモン諸島、トンガ、バヌアツの代表が参加。また、オブザーバー資格でカナダ、フランス、ドイツ、インド、韓国、PIFEUからの代表も参加した。

(注21971年に発足した枠組みで、大洋州諸国首脳との対話の場および地域協力の核となっている。オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーなど16カ国・2地域が加盟し、政治、経済、安全保障など幅広い分野における地域協力を行っている。

(注3)航空基地やレーダーサイトなどの軍事施設が、敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力。抗堪(こうたん)力。

(注42019年の第34ASEAN首脳会議において採択された、ASEAN独自のインド太平洋構想(2019年6月28日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、英国、太平洋諸島)

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