中銀が2023年GDP予測を1.6%に引き下げ、米国経済の減速を織り込む

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2022年09月08日

メキシコ中央銀行は831日、2022年第2四半期レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表し、2023年メキシコ経済の実質GDP成長率の予測値を前回発表(202261日)から0.8ポイント引き下げ、1.6%とした。一方、2022GDP成長率の予測値については、2.2%と前回から変更しなかった。

中銀は、2023GDP成長率予測値の引き下げを行った要因について「世界的に高水準で推移するインフレ率、さらなる引き締めを継続する各国の金融政策、地政学的または通商政策的な様々な緊張から、世界経済見通しは悪化を続けている」と説明した。特に「米国経済が減速し、生産活動が停滞すると見込まれている」ことから、以前の予想よりも享受できる外需が小さくなることがGDP成長率予測値の引き下げ理由だとしている。

2022年のGDP予測値を変更しなかった理由については、「2022年下半期には経済のダイナミズムが低下することが見込まれる」ものの、第2四半期のGDP成長率が予想を上回ったためとしている。加えて、内需は段階的な回復を続けるとみられるものの、米国とカナダ両政府が、メキシコのエネルギー政策が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に違反しているとして、同協定の紛争解決手続きに基づきメキシコ政府に協議を要請している件(202289日記事参照)が「新たな不確実性とリスクをもたらし、国内の投資決定に影響を与えかねない」と指摘している。

中銀は91日に内外38民間シンクタンクに対して実施したアンケートの調査結果PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)81630日実施)を発表、同アンケートにおいても2023年のGDP予測値(平均)は前月調査時から低下し、1.60%から1.36%へと0.24ポイント減少している。

2022年第2四半期GDP成長率(改定値)は前年同期比2.0%、製造業が好調

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)が825日に発表した、2022年第2四半期GDP成長率(改定値)は前年同期比2.0%、季節調整済み前期比0.9%だった〔添付資料「表1 産業別実質GDP成長率(季節調整前、前年同期比)、「表2 産業別実質GDP成長率(季節調整済み、前期比)」参照)。前年同期比のデータのみが速報値から0.1ポイント下方修正された。産業別のデータをみると、製造業が前年同期比5.0%増、電気・ガス・水道業が3.7%増と伸長したことから、鉱工業が3.3%増と成長を牽引している。製造業付加価値の約2割を占める輸送機器製造業は、新型コロナウイルス感染拡大以降のサプライチェーンの再編でニア・ショアリングの重要性が増し、対米向け自動車部品の生産が好調に推移したことから、4.7%増と堅調だった。

サービス産業では、運輸・倉庫業が前年同期比14.3%増、ホテル・レストラン業が24.8%増と好調だったが、20214月の連邦労働法改正の影響を受けたビジネス支援業は73.6%減と大幅な後退が続き、2021年後半から引き続いて最も大きなGDPの押し下げ要因となっている(202263日記事参照)。

(松本杏奈)

(メキシコ、米国)

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