第1四半期のGDP成長率、前年同期比1.8%、製造業と運輸・倉庫が牽引
(メキシコ)
メキシコ発
2022年06月03日
メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)は5月25日、2022年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率の産業別内訳を発表した。同四半期のGDP成長率は前年同期比1.8%で、速報値より0.2ポイント上方修正され、季節調整済みの前期比は1.01%で、こちらも速報値から0.1ポイント上方修正された。
産業別にみてみると、鉱業、電気・水道・ガス、建設業、製造業で構成される第二次産業(鉱工業)が前年同期比3.1%だった(添付資料表1参照)。特に、製造業は同4.7%と好調だった。半導体不足に代表される供給難は続いたものの、米国向けを主にした輸出の堅調な伸びに支えられ、GDP全体を0.77ポイント押し上げた。鉱業は前年同期比2.3%、電気・ガス・水道業も同2.2%と増加したが、建設業はマイナス0.1%と振るわなかった。
第三次産業(サービス産業)は前年同期比0.9%だった。運輸・郵便・倉庫業は、製造業の好調で物流需要が堅調に推移したこともあり、同16.6%と大幅に伸び、寄与度も0.96ポイントと、GDP全体にとって最大の押上げ要因となった。ホテル・レストラン業は前年同期比42.7%と大幅に増加し、2021年第1四半期の大幅減(同34.3%減)を取り戻した。2022年1月から3月にかけてオミクロン株による新型コロナウイルス感染が拡大し、外出自粛の傾向が強まったものの、2021年12月に高齢者を対象に開始したワクチンのブースター接種が2022年2月末には18~29歳まで進んだことが奏功したとみられる。その他、通信・マスメディアも前年同期比15.2%と大きく伸び、卸売業は6.0%、小売業も4.1%と堅調だった。一方、ビジネス支援業は前年同期比マイナス73.6%と大幅に後退し、GDP全体を3.13ポイント押し下げた。2021年4月の連邦政府労働法改正(2021年4月27日記事参照)により人材派遣業が原則禁止となったことから、多くの人材派遣会社が操業困難な状況や廃業に追い込まれたことで、ビジネス支援業は2021年のメキシコ経済にとって最大の後退要因となった(2022年3月1日記事参照)が、同様の傾向が2022年第1四半期も続いている。
農牧・林業・水産業は、前年同期比では1.9%だが、前期比ではマイナス2.04%だった。天候不順による不作や、農薬価格の高騰が影響したとみられる(添付資料表2参照)。
ムーディーズ、メキシコの2022年GDP成長率を引き上げ
大手格付け機関ムーディーズは5月26日、メキシコの2022年GDP成長率の予測値を1.1%から1.8%へ0.7ポイント引き上げた(「エル・エコノミスタ」紙5月26日)。その理由について「(各種経済指標が)予想よりも良い値となったこと」や、「サービス産業の活性化」と説明している。その他の機関による2022年のメキシコのGDP成長率予測値は、IMFが2.0%、世界銀行が2.1%、メキシコ中央銀行が2.4%、大蔵公債省が3.4%となっている。
(松本杏奈)
(メキシコ)
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