バイデン米政権、デジタルドルについての報告書発表

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月22日

米国財務省は916日、デジタルドルについての報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。デジタルドルに関しては、20221月に連邦準備制度理事会(FRB)が関連する報告書を公表しており(2022年1月26日記事参照)、3月にはジョー・バイデン大統領がデジタルドルを含むデジタル資産の研究開発促進を指示する大統領令に署名している(2022年3月10日記事参照)。今回の報告書はこの大統領令を受けて財務省が作成した。

報告書は、(1)消費者・投資家・企業の保護、(2)安全で安価な金融サービスへのアクセス促進、(3)金融安定化促進、(4)イノベーションの推進、(5)グローバルな金融リーダーシップと競争力の強化、(6)不正な資金への対策、(7)中央銀行のデジタル通貨(CBDC)研究の奨励の7つの柱に沿ってまとめている。特に(1)について、暗号通貨をはじめとするデジタル資産の世界における時価総額が202111月に3兆ドルに達した一方で、現在では時価総額は同月のピーク時の3分の1に縮小しており、価値が不安定な点を指摘している。また、2021年に報告されたデジタル通貨に関連する詐欺による被害額が前年の約7倍に増加した点も挙げた上で、連邦取引委員会(FTC)などに対し、消費者の苦情を監視し、不公正な行為などを取り締まる努力をさらに強化すべきと提言している。また、(5)については、中国など各国でデジタル通貨の研究開発が先行していることを念頭に、国際機関や標準設定団体などでデータプライバシーや自由で効率的な市場といった価値を反映した基準や規制を促進するため、米国のリーダーシップを強化するとしている。具体的には、国務省や司法省などは外国のパートナー機関と協力して、2国間の情報共有や能力開発などの取り組みを強化する。

7)に関連して、FRBのデジタルドル研究開発の取り組みを支援していくため、財務省は省庁間のワーキンググループを発足させ、関係省庁と情報共有などを行うなど、デジタルドル研究についての進捗状況を今後定期的に検証していくとした。ジャネット・イエレン財務長官は報告書公表に当たって会見し、ワーキンググループ発足について「政権全体の専門知識を活用し、CBDCについてFRBが行っている作業を支援していく」と述べている。

(宮野慶太)

(米国)

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