米FRB、「デジタルドル」について報告書公表、5月20日まで意見公募

(米国)

ニューヨーク発

2022年01月26日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は1月20日、中央銀行発行によるデジタル通貨についての報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。FRBが同テーマで報告書を公表するのは初めてで、5月20日まで広く一般から報告書に関する意見を募集外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますするとしている。

デジタル通貨とは、デジタル上で管理・保存・交換される通貨を指し、バーコード決済のような電子マネーや、ビットコインなどの暗号資産が該当する。紙幣や貨幣などの法定通貨のように中央銀行が発行するデジタル通貨は、上述したようなデジタル通貨と区別するために、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)と呼ばれている(添付資料表1参照)。CBDCについては、コスト低下や金融包摂拡大などさまざまなメリットが指摘されており(添付資料表2参照)、その研究は中国や欧州諸国など80カ国以上で進んでいるとされる。そのため、世界の基軸通貨であるドルのデジタル化に向けた動きに注目が集まっている。

報告書は今回の目的について「CBDCの利点とリスクに関し、広く透明性のある議論を促進する」ためで、「特定の政策推進」を意図することではないと強調、加えて「行政機関や議会の明確な支援なしにCBDCの発行を進めることをFRBは意図しない」とした。その上で、CBDCのメリットについて、コスト低下やより安全なデジタル決済手段の提供、国家間決済などの迅速化などを挙げている。デメリットについては、国民のCBDC選好による銀行など既存の資金仲介機能への影響や、プライバシー保護の確保などを挙げた。また報告書では、暗号資産の一種のステーブルコインなどについて「ステーブルコインやそのほかの暗号資産を含む民間のデジタル通貨には、流動性や信用リスクを低減するメカニズムが必要。しかし、これらは不完全」「こうした民間デジタル通貨の普及は、個人と金融システムの双方にリスクをもたらす可能性がある」と指摘するとともに、「CBDCはこれらのリスクの一部を軽減することができる」としている。ステーブルコインは法定通貨に対して安定した価値を維持するように設計された暗号資産だが、発行時に裏付けとなる資産が脆弱(ぜいじゃく)なことなどから、大統領府に置かれた金融市場に関する作業部会が議会に対し、発行機関への規制を強めるべきとの提言を行うなど、大きな問題となっている。

CBDCに関し、中国ではデジタル人民元の実証研究が各国に先行して進んでいる。米中関係の悪化が進んでいるが、一部では経済のデカップリングが進んでいるとの指摘もある。国際決済という点からは、国際決済額のドル建て比率は現在40%超なのに対し、中国の人民元は3%弱にすぎない。しかし、デジタル人民元の取り組みが成功し、コスト低下などのメリットが広く認知されれば、人民元を用いた決済の比率が今後上昇する可能性もある。高いドル決済比率は基軸通貨としてのドルの存在のみならず、ドル建て取引の停止といった経済制裁の手段としても有効に機能してきたが、人民元による国際決済が今後増えていけば、ドルのこうした側面が薄れることにつながる。通貨の世界でも、米中デカップリングが進むか、決済比率の動向を含め、両国のデジタル通貨の今後の取り組みが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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