米エネルギー省、産業部門の脱炭素化に向けたロードマップ発表

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月09日

米国エネルギー省(DOE)は9月7日、産業部門の脱炭素化に向けたロードマップを発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。産業部門の温室効果ガス(GHG)排出量は、米国全体の24%を占め、輸送部門(27%)と電力部門(25%)に次ぐ大きさとなっている。他方、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの導入加速など輸送や電力部門の脱炭素化に比べ、産業部門の取り組みは相対的に遅れている。今回、産業部門のロードマップを発表したのは、8月16日に成立したインフレ削減法などによる資金手当てを後押しに脱炭素化を進める狙いがある(2022年8月17日記事参照)。

ロードマップでは、脱炭素化の対象を化学(20%)と、石油精製(17%)、鉄鋼(7%)、食品、飲料(6%)、セメント、石灰(2%)という5つのエネルギー集約型分野に定めた。取り組みを推進する4つの柱として、エネルギー効率、産業の電化、低炭素燃料・原料・エネルギー源、二酸化炭素(CO21)の回収利用・貯留(CCUS)を挙げている。また、DOEはロードマップに加えて、化学、鉄鋼、食品などの分野で脱炭素化を進めるため、1億400万ドルの資金調達機会を提供することを併せて発表した。

産業部門のGHG排出量削減について、米国企業の取り組みは、他国に比べて相対的に活発とはいえない現状がある。パリ協定では、各国が世界的な平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5度に抑えるよう長期目標を掲げているが、環境団体のCDPが9月6日に発表したレポートによると、G7各国の民間企業による現行の取り組みでは2.7度まで上昇すると分析している。特に、米国の民間企業によって2.8度に上昇し、ドイツとイタリア(2.2度)やフランス(2.3度)、英国(2.6度)などと比較しても、取り組みが十分でないと結論づけている。ロシアによるウクライナ戦争でエネルギーや原材料価格が高騰し、化石燃料に回帰する動きも見られる中、DOEの取り組みが米国企業の脱炭素化をどこまで促せるかに引き続き注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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