米エネルギー省、航空燃料の2050年SAF100%化に向けた工程表を発表

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月27日

米国エネルギー省(DOE)は923日、2050年における持続可能な航空燃料(SAF、注)の100%化に向けた工程表を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。工程表の作成には、DOEに加え、農務省や運輸省、環境保護庁なども協力した。バイデン政権は20219月に、2050年に航空部門で使用される燃料(軍事・非軍事双方を含む)の100%をSAFに置き換えるという目標を発表しており(2022年9月13日記事参照)、今回、具体的な工程表が作成された。

現在、航空部門で使用される燃料は年間で約350億ガロン(約1,330億リットル)だが、工程表では、米国におけるトウモロコシや藻類、農業残留物など再生可能なバイオマスの存在を考慮すれば、年間500億~600億ガロンの高度バイオ燃料を生産できると分析した。20219月のSAF100%化の目標発表時に、2030年には年間30億ガロンのSAFを生産・利用するという目標も掲げられており(2021年時点のSAF生産量は年間450万ガロン)、理論面からこの目標が十分に達成可能なことを裏付けた。

また工程表では、SAFの供給と利用拡大、コスト削減、持続可能性の向上の3つを達成目標に掲げ、この達成のため、(1)原材料イノベーション、(2)技術革新、(3)サプライチェーン構築、(4)政策評価分析、(5SAF最終利用の具体的実現、(6)進捗状況の共有と支援体制の構築という6つの行動領域を設定した。この達成のため、2023年度中に官民合同のチームを結成していくとした。

前述の2030年目標達成のためには、現時点で商業利用可能な技術と原材料に焦点を当てる必要があることから、SAF原料として油やグリースなどの脂質ベースの原料が主に使用されることになり、森林や農業残留物、アルコールなどの原料は、2030年までの間は大きくないと予想している。

また20228月に成立した「インフレ削減法」では(2022年8月17日記事参照)、SAFの生産などへの助成金および税額控除の資金として、今後4年間で29,000万ドルの予算が充てられている。支援対象となるSAFは、生産から使用までのライフサイクルにおいて、従来の航空燃料よりも温室効果ガス(GHG)排出性能を最低50%改善させる必要がある。税額控除については、SAFGHG排出性能の改善割合に応じて、SAF1ガロン当たり1.25ドルから最大1.75ドルまで認められることになっている。

(注)Sustainable Aviation Fuelの略称。廃棄材や食用油などを原料とする燃料で、従来の航空燃料と比べて80%程度のCO2排出量を削減できるとされるが、価格差は2021年時点で最大10倍程度あるとされる。

(宮野慶太)

(米国)

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