米鉄道労使交渉、連邦上院議員が鉄道サービス停止回避に向け共同決議案を提出

(米国)

ロサンゼルス発

2022年09月14日

米国では、鉄道会社と従業員の労働組合の間で労使交渉が継続しており、916日以降はストライキなど実力行使に訴えることが可能となる。こうした中、連邦議会の上院保健教育労働年金委員会のリチャード・バー少数党筆頭理事(共和党、ノースカロライナ州)と上院商業科学運輸委員会のロジャー・ウィッカー少数党筆頭理事(共和党、ミズーリ州)は912、ストライキによる鉄道サービスの停止を回避するため、共同決議案を提出PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

共同決議案では、916日午前01分(東部夏時間)までに労使双方が合意しない場合には、大統領緊急委員会(PEB)の報告と勧告(注1)が紛争当事者を「拘束」し、当該当事者が鉄道労働法に基づく合意に達したのと同様の効果を有するとして、労使双方にPEBの勧告の適用を強制している。一方で、共同決議案はPEBの勧告とは異なる条件で合意することを妨げてはいない。

米国連邦議会では、共同決議案は法律案より限定された事項を扱う傾向があるが、上下両院の議決後、大統領の署名を経て法律となり、法的拘束力を持つ。

鉄道業界では20201月から主に賃上げを争点とした労使交渉が貨物鉄道会社と従業員の労働組合の間で継続している。連邦政府機関の全国仲裁委員会(NMB)による仲裁が不調に終わったため、ジョー・バイデン大統領は715日にPEBを創設する大統領令に署名し(2022年7月20日記事参照)、PEB816日に解決に向けた勧告をバイデン大統領に報告していた(2022年8月22日記事参照)。全米の貨物鉄道会社を代表して交渉を行う全米輸送会社会議委員会(NCCC)はこれまでに9組合との暫定的な合意に達したと発表している(2022年9月2日記事9月8日記事9月13日記事9月14日記事参照)。PEBによる勧告後30日間で労使双方が合意に至らない場合には、916日からストライキやロックアウト、雇用条件の一方的な変更が可能となるため、貨物鉄道会社はストライキなどの事態の発生に備え、危険物の輸送を中止する緊急措置を顧客に通知するなど、緊張が高まっている。こうした事態を回避するため、米国商工会議所や農業業界団体は連邦議会に介入(注2)を要請していた(2022年9月14日記事参照)。

(注12020年から2024年までの5年間に複利24%の賃上げ(即時発効は14.1%)と、同期間中の毎年1,000ドルの特別ボーナス支給などがPEBによる勧告の主な内容とされている。

(注2)全国鉄道労働組合総連合会(NRLC)は、過去に行われた連邦議会の介入措置として、交渉継続の期間の延長、PEB勧告の実施、強制仲裁を挙げている。

(永田光)

(米国)

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