米鉄道労使交渉で新たに3組合が暫定合意を発表も、実力行使可能となる9月16日控え緊張高まる

(米国)

ロサンゼルス発

2022年09月13日

米国内の鉄道で労使交渉が継続する中、全米の貨物鉄道会社を代表して交渉を行う全米輸送会社会議委員会(NCCC)は9月11日、新たに3組合と暫定的な合意に達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

暫定的な合意を今回締結したのは、国際トラック運転手労働組合道路整備員部門(BMWED)、国際ボイラー製造員労働組合、板金・航空・鉄道・運輸組合機械工部門(SMART-MD)。この暫定合意により、大統領緊急委員会(PEB)の勧告のとおり、2020年から2024年までの5年間に複利24%の賃上げ(即時発効は14.1%)と、同期間中の毎年1,000ドルの特別ボーナス支給が実施される。賃上げと特別ボーナスの一部はさかのぼって適用され、組合員による同意が得られ次第、速やかに支給される予定だ。今回の暫定合意により、交渉に参加している12組合のうち8組合が暫定合意に達したことになる(2022年9月2日記事9月8日記事参照)。

米国鉄道業界では2020年1月から、主に賃上げを争点とした労使交渉が貨物鉄道会社とその従業員の労働組合の間で継続している。連邦政府機関の全国仲裁委員会(NMB)による仲裁が不調に終わったため、ジョー・バイデン大統領は2022年7月15日にPEBを創設する大統領令に署名し(2022年7月20日記事参照)、PEBは8月16日に解決に向けた勧告をバイデン大統領に報告していた(2022年8月22日記事参照)。

PEBによる勧告後30日間で合意に至らない場合には、9月16日からストライキやロックアウト、雇用条件の一方的な変更が可能となる。ユニオン・パシフィック鉄道やBNSF鉄道など主要貨物鉄道会社は、ストライキなど不測の事態の発生に備え、危険物の輸送を中止する緊急措置を顧客に通知しており、緊張が高まっている。

NCCCによれば、暫定合意に達していない残りの組合と積極的に協議を進めているが、米国2大鉄道組合の機関車電車工同盟(BLET)と板金・航空・鉄道・運輸組合輸送部門(SMART-TD)はPEBを明確に拒否した立場を維持しているという。一方で、両組合は9月11日に共同声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、組合が受け入れ可能な合意案を鉄道会社側が拒否しており、鉄道会社の緊急措置は議会の行動を誘発している、と批判した上で、「議会は鉄道問題には関与せず、鉄道会社に対して他のビジネスリーダーがするように、従業員が納得する合意に向けて腰を据えて交渉するよう告げるべきだ」と述べている。

米国鉄道協会(AAR)は、双方が合意に至らず、鉄道サービスが停止した場合、米国経済に1日当たり20億ドルの追加コストをもたらすと警告しており(2022年9月12日記事参照)、鉄道労使交渉の動向には引き続き注視が必要だ。

(永田光)

(米国)

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