ASEANと米通商代表部、経済関係強化の取り組みを確認

(ASEAN、米国)

アジア大洋州課

2022年09月22日

ASEAN加盟国の経済閣僚と米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は9月18日、カンボジアにおいて会合を行い、ASEANと米国の経済関係の強化などについて協議した。会合後に発表した共同メディア声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、米国とASEANの貿易・投資額が2021年に回復したことを確認した一方、新型コロナウイルス感染拡大収束後の経済回復がいまだ脆弱(ぜいじゃく)であることに加え、地政学的緊張の高まりとグローバルな食料・エネルギーの安全保障、サプライチェーンの断絶、物価上昇圧力の高まりに対して、深い懸念を表明した。また、インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP、注)への支持をあらためて表明した。

共同メディア声明によると、2021年の米国とASEANの貿易額は3,640億ドルで、前年から17.9%増加した。米国による対ASEAN投資額も前年比41.1%増の400億ドルだった。

ASEANと米国の経済関係強化については、2021年11月に行われた第9回米国・ASEANサミットにおける経済分野の取り組みに向けた実務的な議論が進んでいることを歓迎した。さらに、5月の米国・ASEAN特別サミットで発表したASEAN・米国包括的戦略パートナーシップの立ち上げ(11月予定)について、今後の両国・地域関係に有意義で実効的、互恵的な結果をもたらすことが重要であることを確認した。

また、既存の枠組みであるASEAN・米国貿易投資枠組み協定(TIFA)と拡大経済関与(E3)について、2021~2022年にデジタル化、貿易円滑化、中小零細企業の支援の分野で良い結果が出ていることを確認した。ASEANと米国の通関システムの間で、情報の電子的交換に向けた議論が行われていることも確認した。また、2022~2023年には、持続可能なエネルギーやグリーン経済、貿易の技術的障害などに関する良き規制慣行(Good Regulatory Practices)などの分野で取り組みを行うことを承認した。

さらに、声明では、2022年6月に開催された第12回WTO閣僚会議(MC12)についても言及し、会議において議論された各事項に関して、WTO加盟国による取り組み実施への期待を表明した。MC12では、約6年ぶりに閣僚宣言が出されるなどの進展があった。中でも、食料安全保障にかかる緊急的な貿易措置や、新型コロナウイルスワクチンに関する知的財産権の取り扱いなど、国際社会が直面する課題に関して、多国間で行う取り組みについて一致していた。

米国によるデジタル人材育成の取り組みを歓迎

今回の会合では、ASEANの中小企業の人材育成に関する具体的な取り組みとして、米国の支援で2022年4月に立ち上げられた「ASEAN中小企業(SME)アカデミー2.0外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を歓迎した。同アカデミーは、ASEANの中小企業が、デジタル技術や経営に関するスキルを獲得するためのオンライン教育プラットフォームで、グーグル、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、メタなどがIT、ファイナンス、マネジメント、マーケティングなどの学習プログラムを提供している。

(注)2019年の第34回ASEAN首脳会議において採択された、ASEAN独自のインド太平洋構想(2019年6月28日記事参照)。

(山城武伸)

(ASEAN、米国)

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