欧州委、デジタル化やAIに対応した製造物責任指令の改正案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年09月30日

欧州委員会は9月28日、現行指令を現代化させる新たな製造物責任指令案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます人工知能(AI)の開発事業者の民事責任に関する指令案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委は現在、デジタル経済に対応した製品の安全性に関する法整備を進めており、AI規制枠組み規則案(2021年4月23日記事参照)、一般製品安全指令の改正案(2021年7月7日記事参照)、サイバーセキュリティー対応義務化規則案(2022年9月28日記事参照)を既に発表している。一方で、消費者が欠陥のある製造物により損害を被った場合の製造事業者などの民事責任を規定する現行の製造物責任指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに関しては、1985年に施行されたことから、デジタル化に十分対応できておらず、被害者の実効的な救済を妨げているとして改正の必要性が指摘されていた。今回発表された指令案は、こうしたデジタル化の進展や欧州委が推進する循環型経済の拡大に即したものだ。

製造物責任指令案は、EU域内で上市(市場投入)されるあらゆる製品に適用される。適用対象となる製品には、ソフトウエアが含まれること、また製品の欠陥がデジタルサービスや、サイバーセキュリティー対応などのソフトウエアのアップデートあるいはその欠如による場合にも、製造事業者が責任を負うことが明確にされている。

製造物責任を負う事業者には、従来の製造事業者、EU域内の輸入事業者(製造事業者が域外で設立されている場合)などに加えて、認定代理人や、場合によっては、オンライン上のマーケットプレイスなどの販売事業者も含まれる。これは、消費者がEU域外から製品を直接購入することが増えていることから、こうした消費者の効果的な救済をより容易にするためだ。被害者が域内の事業者を特定できない場合で、かつ販売事業者がこれらの事業者を特定しない場合、販売事業者は製造物責任を負うことになる。また、循環型経済に関しては、改造などによる製品の長寿命化が志向されていることから、上市済みの製品に実質的な改造を施した事業者も製造物責任を負う。

また、より実効的な救済を確保するために、被害者は裁判所に対して製造事業者などに情報開示を請求することができる。さらに、立証責任自体は被害者側に残るものの、一定の条件で立証責任が緩和される。裁判所が技術的な複雑性などにより製品の欠陥や欠陥と損害の因果関係の立証が過度に困難であると判断した場合に、被害者が製品の欠陥や欠陥と損害の因果関係を完全に立証していない場合であっても、一定程度の立証をしていれば、裁判所は製品の欠陥や損害との因果関係を推定することができる。なお、製造事業者は、この推定を反証することができる。

AIの民事責任に関する指令案は、製造物責任指令案を補完する特別規定を設けたものだ。製造物責任指令案はAIシステムも適用対象としているものの、AIシステムはその複雑性やブラックボックス問題により、その欠陥や因果関係を立証することが特に困難かつ高額であることから、被害者の立証責任において因果関係の推定を導入し、AI規制枠組み規則案が規定する高リスクのAIシステムの開発事業者に対する情報開示請求を容易するための規定が別途設けられている。

これら法案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

(吉沼啓介)

(EU)

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