欧州委、オンライン販売など対応の一般製品安全指令の改正案発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年07月07日

欧州委員会は6月30日、2002年に施行された現行の一般製品安全指令(注)を約20年ぶりに改正する規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回の改正案は、EU加盟国ごとの国内法制化が必要な現行「指令」をEU域内で直接適用する「規則」に置き換えるものだ。消費者向けの製品に対するセーフティーネットとしての役割を維持しつつ、サイバーセキュリティーなどのリスクやオンライン販売などにも幅広く対応させ、より統一的で高いレベルでの消費者保護を目指す。

一般製品安全指令とは、製造事業者などに安全な製品のみを市場に供給する義務を課す消費者保護規制だ。食品や医療関連など特定のEU法により安全規制の対象となっている製品を除き、EUの消費者向けあるいは消費者が利用し得る全製品が対象となる。今回の改正案は、現行法のこうした大枠を維持する一方で、製造事業者に対しては、事業者情報の表示や、製品の一般概要、リスク分析などを記した技術文書の作成・保管などの新たな義務を課すなど、トレーサビリティー向上やリコールの実効性の強化などを目的に、製造事業者や輸入事業者、販売事業者などの各事業者の義務を明確にしている。

サイバーセキュリティーリスクやマーケットプレースにも新たに対応

今回の改正案は「安全な製品」の概念にサイバーセキュリティーに関するリスクを加味させている。現状では、ICT(情報通信技術)製品のサイバーセキュリティーに関する安全規制を定めるEU法は制定されていない。そこで今回の改正案は、各事業者に対して、製品の安全性の評価に当たって、サイバーセキュリティーのリスクを考慮することを求めている。ただし、具体的な要件は定めていない。

また、今回の改正案は、オンラインのマーケットプレースも新たに規制対象とする。マーケットプレースは、加盟国の市場監視当局との連絡窓口を設置し、危険な製品に関する違法なコンテンツに関して、削除やアクセス禁止といった命令を当局から受けた場合に、2日以内に対応することが求められる。また、違法コンテンツの検出や削除、アクセス禁止といった自主的な措置を念頭に、当局からの危険な製品に関する通知に適切に対応し、リコールなどの場合には当局や事業者との協力が求められる。今回の改正案は、マーケットプレース上の情報を全般的に監督することや、危険な製品に関する違法なコンテンツを積極的に特定するといった義務を課すものではない。しかし、マーケットプレースが違法なコンテンツの存在を把握した場合には、迅速に削除するなどの対応がより一層期待されることになる。

今回の改正案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される予定だ。

(注)詳細はジェトロのレポート「EUにおける製造物安全制度PDFファイル(69KB)」を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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