ドイツ政府、ロシア石油大手ロスネフチの子会社を一時的に信託管理下に

(ドイツ、ロシア)

デュッセルドルフ発

2022年09月27日

ドイツ連邦政府は9月16日、ロシアの国有石油大手ロスネフチの子会社であるロスネフチ・ドイチュラントとRNリファイニング&マーケティングを、エネルギー確保法に基づき、連邦ネットワーク庁の信託管理下に置いたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

エネルギー確保法は1975年に施行され、ウクライナ情勢を受け、2022年4月と7月に改正された。重要なエネルギーインフラを運営する企業が業務を十分に遂行できなくなり、エネルギーの安定供給が損なわれる恐れがある場合、同企業を一定期間、政府の信託管理下に置くことを可能にする(2022年5月20日記事参照)。今回の措置の背景には、顧客や銀行、他のサービスプロバイダーなどがロスネフチと取引する意思がなくなり、事業運営が危ぶまれていたことにある。信託管理下に置くことで、同社傘下の製油所の事業活動の維持を目指している。同信託管理の措置は9月16日~2023年3月15日の間、有効だ。ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は記者会見で、今後の石油供給についてはポーランドとの協議が順調に進んでいるとした。一方でロスネフチは9月16日、これに対する法的措置を含むあらゆる対応を検討すると発表した。

EUは対ロシア経済制裁の一環として、ロシア産の原油や石油製品の禁輸を決定している(2022年6月6日記事参照)。一方、ロスネフチにとってロシア産原油の供給継続は同社の利益につながるため、原油供給元の変更やそれに伴う投資に同意しない可能性が非常に高く、EUの制裁に反することになりかねない。

ロスネフチ・ドイチュラントが運営する3つの製油所の年間石油精製能力は約1,250万トンと、ドイツの石油精製能力の12%以上を占めている。同社は国内で3番目に大きい規模を有する製油会社だ。連邦ネットワーク庁は、ロスネフチが保有するドイツ国内の製油所の株式もそれぞれ引き取る(添付資料図参照)。そのうち、北東部のシュベット市にあるPCK製油所については、ロスネフチが株式の54.17%を保有している。同製油所はベルリン市や同市周辺のブランデンブルク州の燃料の供給を担っているが、現在はロシアからのパイプライン経由でロシア産原油が供給されている。経済・気候保護省は併せて、東部の製油所や港湾に対して、エネルギー輸入に必要な変革に向けた10億ユーロ以上の規模の支援パッケージを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。そのうち、PCK製油所とその周辺地域に8億2,500万ユーロを割り当てる。

なお、既に政府は、ロシア国有ガス会社ガスプロムのドイツ子会社であるガスプロム・ゲルマニアを、2022年4月4日~9月30日の間、連邦ネットワーク庁の信託管理下に置いている。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、ロシア)

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