ギソン2火力発電所が完工、電力供給改善に期待

(ベトナム)

ハノイ発

2022年09月05日

ベトナム中部タインホア省で828日、石炭火力発電所「ギソン2」の完工式が開催された。ギソン2は、ベトナム電力総公社(EVN)に対し、発電所の運転開始から25年間にわたり売電を行う予定だ。ベトナムでは、堅調な経済成長を背景に電力需要が急増する一方、電力需給の逼迫が危惧されており(2022年4月8日記事参照)、同発電所には電力不足解消への貢献が期待される。

同発電所の発電事業会社であるギソン2パワーは、20141月に設立された。ギソン2パワーには、丸紅(出資比率:40%)、東北電力(10%)、韓国電力公社(KEPCO50%)が共同出資し、国際協力銀行をはじめ、日本の金融機関が協調融資をしている。総投資額は約28億ドルで、発電事業はBOT方式(注1)だ。

同発電所の建設は20187月に着工され、20221月に1号機、7月に2号機が商業運転を開始した。出力規模は2基の合計で120万キロワット(kW)。年間発電量は780万メガワット時(MWh)が見込まれ、これはベトナム全体の発電量の2.8%に相当する。発電された電力は、ベトナム北部向けに供給される。超臨界圧発電方式(SC、注2)を採用し、発電効率の上昇、環境負荷軽減努力を行う。環境負荷軽減装置で、石炭燃焼時に発生する硫黄酸化物SOx(ソックス)、窒素酸化物NOx(ノックス)を取り除く。

石炭火力発電所が新設される一方で、ベトナムは2050年までのカーボンニュートラルを掲げており(2021年11月9日記事参照)、現在策定中の第8次国家電力マスタープラン(PDP8)で、石炭火力から他電源への切り替えなどを調整している。ギソン2パワーの相良博英社長は「ベトナムでは今後、太陽光発電やバイオマスの利用などの事業にも取り組みたい」と語った。

完工式には、グエン・スアン・フック国家主席、レ・バン・タイン副首相、ド・チョン・フン・タインホア省党委員会書記も出席した。タイン副首相は歓迎の言葉とともに、「急速かつ持続可能な経済発展に応えるエネルギーを確保することが重要」と新たな電力供給による事業環境改善の意義を述べた。

写真 ギソン2完工式の様子(ギソン2パワー提供)

ギソン2完工式の様子(ギソン2パワー提供)

(注1Build- Operate -Transferの略で、一括事業請負後譲渡方式といわれる。民間事業者が建設・運営し、契約期間終了後に行政に移管する。

(注2)石炭を燃焼させて作る蒸気を、従来よりもさらに高温、高圧にして発電効率を高めて発電する方式。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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