ベトナム、電力需要が増加、石炭供給難で電力不足の恐れ

(ベトナム)

ハノイ発

2022年04月08日

ベトナム電力総公社(EVN)は4月3日、ファム・ミン・チン首相が議長を務める発電用の石炭・ガス供給状況に関する会議で、電力供給状況を報告した。経済成長とともに電力需要が増える一方、石炭の供給難により、北部を中心に電力不足リスクの高まっていることが明らかとなった。

EVNによると、ベトナムにおける2022年第1四半期(1~3月)の発電量は、当初計画を上回る前年同期比7.5%増の6万2,850ギガワット時(GWh)だった。ピーク電力は5.9%増の4万144メガワット(MW)に達した。

電力需要が伸びた一方、石炭火力による発電量は当初計画を1,360GWh下回った。資源価格高騰を受けて石炭の輸入量が減少したほか、新型コロナウイルス感染者増加によって炭鉱の人員が不足した。その結果、第1四半期にEVNの火力発電所に供給された石炭の総量は、供給会社との契約量の76.8%に相当する449万トンにとどまった。そのため、石炭火力発電所のうち、ギソン第1(中部タインホア省)、ブンアン第1(中部ハティン省)、ビンタン第2(南部ビントゥアン省)、ズエンハイ第1(南部チャビン省)は、通常の6〜7割の稼働率に落ち込んでいる。北部のハイフォン火力発電所は、全4基の発電機うち1基しか稼働できていない。これにより、全国の発電容量は3,000MW以上も減少している状況だ。

ベトナム北部で電力不足のリスク高まる

北部は5~7月にかけて降水量が少なく、気温が上がる日が多い。そのため、水力発電量が減り、代わりに石炭火力発電への依存度が増す。猛暑日には電力需給バランスが悪化するため、節電要請に至る事態も起きており、2021年は企業の生産活動にも影響を及ぼした(2021年7月20日記事参照)。EVNは、石炭の供給難が続く場合、北部のピーク電力が1,300 MWから最大2,500MW不足する可能性があると予測。国民や企業に節電対策を講じるよう呼び掛けている。

北部は電力需要の伸びに対して新たな電源開発計画が追いついておらず、2025年まで電力不足の懸念が残るという。チン首相は、エネルギーの需給バランスを保つことが重要だと強調し、政府機関と企業で協力して対策を講じるよう求めた。

(庄浩充)

(ベトナム)

ビジネス短信 9b562f18eddb0359