OECDの経済見通し改定、回復の勢いを失う世界経済
(世界)
国際経済課
2022年09月28日
OECDは9月26日、「エコノミックアウトルック(経済見通し)中間報告」〔プレスリリース(英語)〕を発表した。2022年の世界の経済成長率(実質GDP伸び率)を3.0%、2023年を2.2%とした(添付資料表参照)。前回(2022年6月)の見通し(2022年6月9日記事参照)と比較すると、2022年は前回から据え置いたが、2023年は0.6ポイント下方修正した。OECDは「世界経済は欧州を筆頭に勢いを失い、経済回復は停滞する」と評した。
また、ロシアのウクライナ侵略前に当たる2021年12月時点の予測と比較すると、2023年の世界GDPの少なくとも2兆8,000億ドルが損失することになる。OECDは同損失額について、「世界全体の経済産出の側面における戦争の代償の大きさがある程度説明できる」とした。
OECDは報告書において、ウクライナ紛争が世界の経済成長を押し下げ、食品とエネルギーを中心とする価格上昇圧力をさらに強めていると指摘した。世界の複合購買担当者景気指数(PMI)、消費者態度指数などの各種指標においても、景気や消費者マインドの鈍化が顕著となっている。G20の2022年のインフレ率予測は8.2%、2023年は6.6%と、前回予測からそれぞれ0.6ポイント、0.3ポイント引き上げられた。各国の中央銀行による金利の引き上げによりインフレはやや緩和傾向となるものの、依然として高い水準で続く見通しを示した。世界的な金融引き締めとインフレ圧力の継続により、新興国・地域では、さらなる金利の引き上げの必要性も指摘した。
2022年の世界の経済成長率見通しは据え置きとなったが、その中で、中国の成長率は前回から1.2ポイント引き下げて3.2%と、1970年代以来の低い成長率を予測した。ゼロコロナ政策による経済活動の停滞に加え、長引く不動産市場の不調が成長を押し下げるとした。
2023年の経済見通しは、軒並み大幅な下方修正となった。特に、ユーロ圏では1.3ポイント減の0.3%となった。ロシアが欧州向けの天然ガス供給を減らし始めていることに加え、エネルギー需要が増加する冬に向け、ガス不足がさらに深刻化することが背景にある。こうした背景から、天然ガスのロシアからの輸入(2020年)が55%を占めるドイツは2.4ポイント減のマイナス0.7%と、マイナス成長に転じる厳しい予測となった。
欧州各国では、不足する天然ガスに代えて、石油や石炭による発電に切り替えを行う動きもみられる。OECDは、石炭や石油への切り替えは短期的なエネルギー不足の解消に寄与するが、ネットゼロの実現やエネルギー危機管理の観点から代替供給源の確保は急務であり、各国政府はグリーントランジションやクリーンエネルギーへの投資に対するインセンティブを強化する必要があると指摘した。
(田中麻理)
(世界)
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