ジェトロ、「米国西海岸港湾の最新状況と労使交渉の行方」セミナー 開催

(米国)

ロサンゼルス発

2022年09月13日

ジェトロは9月8日、「米国西海岸港湾の最新状況と労使交渉の行方」と題したオンラインセミナーを開催した。米国における物流の最新動向について、元ロサンゼルス港湾局職員でジェトロ・ロサンゼルス事務所の物流アドバイザーを務める森本政司氏が解説した。

米国では、新型コロナ禍を発端として港湾の混雑やコンテナ不足、それに伴う海上輸送運賃の高騰が顕在化した。足元では、物価の上昇と連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め政策の進展もあって景気の先行きに不透明感が漂い始め、全米小売業協会(NRF)は2022年下半期の輸入コンテナ取扱量が前年同期比1.5%減少する見通しを示している。英国調査会社ドリューリー(Drewry)によれば、9月8日時点の上海発ロサンゼルス行き40フィートコンテナの海上輸送運賃(4,782ドル)は、2021年12月ピーク時(1万2,424ドル)に比べて61.5%下落している(2022年9月9日記事参照)。森本氏はこうした状況を解説した上で、今後の海上輸送運賃については、需給動向だけでなく、造船費用や人件費、エネルギー価格の高騰の影響を受けるため、新型コロナウイルス感染拡大前の水準にまで下落する可能性は低いと説明した。

また、米国西海岸港湾では、使用者側の太平洋海事協会(PMA)と労働者側の国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約が7月1日をもって失効しており(2022年7月15日付地域・分析レポート参照)、現在も交渉が続いている。セミナーでは、サプライチェーン上のリスクとして注目されている、米国西海岸港湾の労使交渉についても最新動向を解説した。森本氏は、労使交渉の争点であるターミナルの自動化は港湾の処理能力を向上させるために避けられず、トレーニングを通じて労働者の職域の転換が進むと指摘した。今後の労使交渉の行方については、局所的に労働組合が自主的にストライキを行う可能性はあるとしつつも、そうした動きが出てくるたびに、PMAやILWUがバイデン政権と協力して労働組合を説得するため、大きな混乱にはならないと説明した。

このほか、セミナーでは、米国鉄道労使交渉やカリフォルニア州のトラック規制などについても解説した。

セミナーは、ジェトロのウェブサイトでオンデマンド配信中。説明資料もダウンロード可能。

(永田光)

(米国)

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