欧州委、ロシアとのビザ発給円滑化協定を全面停止

(EU、ロシア、ウクライナ)

ブリュッセル発

2022年09月12日

欧州委員会は9月6日、EUがロシアと締結しているビザ発給の円滑化協定を停止するための法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これは、8月31日のEU理事会(閣僚理事会)の政治合意(2022年9月2日記事参照)を受けたものだ。EU理事会が9月9日にこの法案を採択したことから、12日から協定の適用が全面的に停止された。これにより、EU加盟国によるロシア国籍者に対する短期ビザの発給は実質的に厳格化される。

ビザ発給円滑化協定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、EU加盟国とロシアの国籍者に対する短期ビザの発給円滑化を相互に図るものだ。欧州委によると、2022年1~7月の間、ロシア国籍者によるEUへの入域は130万回を超えていた。協定が停止された場合、ロシア国籍者は協定に基づく円滑化措置を受けられなくなることから、発給の決定期間が現状の10日間から15日間(最長で45日間)に、申請手数料が現状の35ユーロから80ユーロに、それぞれ変更される。また、簡略化された書類提出に基づく申請や数次有効のビザの申請もできなくなる。

ただし、EU加盟国によるロシア国籍者に対する短期ビザの発給自体が禁止されるわけでない。協定が停止された場合、ロシア国籍者による申請には、円滑化協定を締結していない他のEU域外国の国籍者と同様に、ビザ・コード規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが適用されることになる。

なお、政治合意で対応を検討するとしていた、9月1日時点で約96万人にも及ぶロシア国籍者が保持する現在有効なEU加盟国のビザの扱いについての言及はなかった。

ウクライナのロシア占領地域で発行のロシアのパスポート非承認を法制化へ

欧州委は同日、ウクライナ東部や南部などでロシアが占領する地域で、あるいは同地域の住民に対してロシアが発効したパスポートについて、EU加盟国へのビザ申請やEUへの入域の際に必要なパスポートとは認めないとする法案も発表した。現状として、ほぼ全てのEU加盟国はこうしたパスポートの使用を認めていないが、欧州委は、法制化によりEU加盟国間の統一的な対応をさらに強化するとしている。この法案は今後、EU理事会と欧州議会で審議される。

(吉沼啓介)

(EU、ロシア、ウクライナ)

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