米カリフォルニア州知事、薬物過剰摂取防止プログラム運営許可法案に拒否権を行使

(米国)

サンフランシスコ発

2022年08月26日

米国カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)は822日、サンフランシスコ市・郡、ロサンゼルス郡、ロサンゼルス市、オークランド市に対して、20281月まで特定の要件を満たす人の薬物過剰摂取防止プログラムを運営する事業者に許可を与える法案(SB57)への署名を拒否して、上院議会へ戻したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同法案は、下院で630日、上院で81日に可決され、ニューサム知事の署名待ちで、知事の動向が注目されていた(2022年8月19日記事参照)。

ニューサム知事は、この法案の成立によって、この先10年において無制限に存立し得る「注射施設」は、意図せぬ結果を招く可能性があるとし、これらの施設が安全性や衛生面の改善に寄与する可能性はあるとしつつも、「しっかりとした計画性を持つものでなければ、本来の目的に反することになりかねない」と法案への署名を拒否した理由を述べた。他方、知事は州保健福祉長官に対して、安全で持続可能な薬物過剰摂取防止プログラムのための最低限の基準とベストプラクティスを議論するよう指示をし、「立地、運営、地域連携、財政的持続可能性に関して、安全かつ効果的であると証明できる真に限定された試験的プログラムが提言された上で、本件が議会に再度提出されれば、私はいつでも議論に臨む」と述べた。

ニューサム知事の署名拒否を求めていたスコット・ウィルク州上院議員(共和党)は、知事による法案への署名拒否に賛成し、「薬物中毒で苦しんでいる人々は、助けを必要としているが、必要なのは、合法的に注射を打てる場所ではない」などと、ウェブサイトで表明した。一方、同法案を推進していたスコット・ウィーナー州上院議員(民主党)は「2代連続で知事(注)が、薬物過剰摂取防止プログラム運営に関する法案を拒否したことで、カリフォルニア州が進歩していないことは明らかだ。サンフランシスコは、自分たちの手でこの問題を解決し、命を守るため安全な施設を開設する必要がある」と自身のツイッターに投稿した。サンフランシスコのロンドン・ブリード市長(民主党)も「法案への署名拒否のニュースに落胆しているが、私たちはあきらめない」とツイッターへ投稿している。

(注)当時のジェリー・ブラウン知事は20189月、サンフランシスコ市・郡に薬物過剰摂取防止プログラムの運営を202211日まで事業体に認める法案(AB186)への署名を拒否した。

(石橋裕貴)

(米国)

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