米カリフォルニア州、議会が薬物過剰摂取防止プログラム運営許可法案を可決、知事の署名待ち

(米国)

サンフランシスコ発

2022年08月19日

米国カリフォルニア州では、サンフランシスコ市・郡、ロサンゼルス郡、ロサンゼルス市、オークランド市に対して、2028年1月まで特定の要件を満たす人の薬物過剰摂取防止プログラムを運営する事業者に許可を与える法案(SB57)が下院で6月30日、上院で8月1日に可決し、知事の署名待ちとなっている。

事業者が同プログラムの運営を許可されるためには、少なくとも次の条件を満たす必要がある。

  1. 薬物の過剰摂取防止や治療を目的に、訓練されたスタッフの監督の下、制御されたかたちで薬物を使用する衛生的なスペースを提供すること。
  2. 無菌消費用品を提供、使用済みの機器を回収し、皮下注射針や注射器の安全な廃棄サービスを提供すること。
  3. 過剰摂取の可能性がある参加者を観察し、致命的な過剰摂取を防止するために必要な治療を提供すること。

この法案が提案された背景として、カリフォルニア州で薬物の過剰摂取による死亡が緊急の公衆衛生上の危機になっていることが挙げられる。また、新型コロナウイルス流行は、薬物の過剰摂取による死亡の急増に関係しているとされる。同州では、薬物の過剰摂取による死者が2020年711人、2021年640人と記録的に多い。法案を推進してきたスコット・ウィーナー州上院議員(民主党)は「薬物を安全に使用できる施設は、過剰摂取による死亡を避け、HIVや肝炎の感染や、注射器のポイ捨てを減らし、人々が治療を受けられるようにするための実証済みモデルだ」などと述べている。他方、共和党の州上院議員団は8月1日、ギャビン・ニューサム知事(民主党)宛てに、法案への署名拒否を求める書簡を送付した。スコット・ウィルク州上院議員(共和党)は、カリフォルニア州に薬物中毒の危機があることを指摘した上で「薬物の隠れ家を推進する民主党は無責任で、優先順位が間違っている。代わりに、カリフォルニア州はリハビリやカウンセリング、治療など代替策に注力しなければならない」と述べ、反対の意を示している。

サンフランシスコ市・郡では、ロンドン・ブリード市長(民主党)が2021年12月、薬物過剰摂取死への迅速な対応を目的とした緊急事態を宣言した。その一環として、2022年1月に薬物過剰摂取対策を含む公衆衛生の支援施設を市内のテンダーロイン地区に開設している。

(石橋裕貴)

(米国)

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