上半期は輸入の伸びが輸出を上回り、貿易赤字が拡大

(トルコ)

イスタンブール発

2022年08月08日

トルコ統計機構TUIKの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます729日付、暫定値)によると、2022年上半期(16月)の輸出は前年同期比20.0%増の1,2586,639万ドル、輸入は40.6%増の1,7726,665万ドルで、輸入超過により貿易赤字は同2.4倍の514億ドルとなった。6月単月では、輸出は前年同月比18.7%増の2342,800万ドルで、月額で過去最高となった。輸入も鉱物性燃料や貴金属、中間財の伸びが著しく、輸出の伸び率を大きく上回る39.7%増の3159,500万ドルだった。

輸出を品目別にみると、鉱物性燃料が前年同期比96.8%増で最大の寄与となった。次いで鉄鋼製品(34.2%増)、鉄鋼(25.7%増)、プラスチック製品(25.6%増)が大きく伸びた。また、第1四半期(13月)に3.6%減と低迷していた自動車・同部品は7.0%増の増加に転じた(添付資料表1202259日記事参照)。

国・地域別の輸出では、全体の42.4%を占めるEU向けが21.7%増となった(添付資料表2参照)。EUでは、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ向けなどが2桁増と好調だった。その他、米国(27.8%増)、イラク(30.2%増)、イスラエル(28.2%増)、ロシア(10.7%増)なども大きく増加した。

輸入を品目別にみると、最大の輸入品目の鉱物性燃料が、世界的なエネルギー価格の高騰と通貨トルコ・リラ安の影響で、前年同期比で2.6倍となった(添付資料表3参照)。また、鉄鋼(30.6%)やプラスチック製品(24.7%増)、貴金属類(39.3%増)、有機化学品(42.8%増)、アルミニウム・同製品(67.8%増)などの伸びが著しかった。現地経済紙は輸入増加の背景として、国際的な商品価格の上昇に加え、政府が法人に対する外貨保有の制限(注1)を求めていることから、トルコ企業が国外のペーパーカンパニーを通じた迂回(うかい)貿易を行うなどの影響も見られると指摘している(7月28日付「デュンヤ」紙)。

国・地域別の輸入では、天然ガスを主力とするロシアからの輸入が倍増した。その他、中国が32.7%増、インドが81.9%増、米国が27.6%増だった(添付資料表4参照)。他方、EUからは7.2%増だったが、減速傾向が見られた。なお、貿易省は、中国とロシアを原産とする一部の鉄鋼製品(HS7312.10、鉄鋼製のより線、ロープ、ケーブル)について、1トン当たり500ドルのアンチダンピング関税を課すと決定した(79日付官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、注2)。

レジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、トルコの輸出額は2022年末に政府目標の2,500億ドルを超える見込みとした(現地日刊紙「ヒュッリイエト・デイリー・ニュース」613日)。貿易赤字の拡大に関しては、現地日刊紙「デイリー・サバフ」は72日、メフメト・ムシュ貿易相が「主因は世界的なエネルギー価格の高騰にある」と述べたことを報じるとともに、ロシアによるウクライナ侵攻の影響による商品価格の上昇が、経常収支を黒字化してインフレ解消に取り組むことを目指すトルコの新経済計画を阻害していると指摘した。

(注1)トルコ政府は外貨の流動性を確保するため、20221月に輸出業者に対して外貨収入の25%を中央銀行へ売却することを義務付け、4月にはその比率を40%に引き上げた。さらに、6月には法人に対して、その外貨資産保有額に応じて貸し出しを規制する施策も発表した。

(注2同日付官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、中国産の鉄鋼製の管と中空の形材(HS7304)の輸入に対するアンチダンピング関税(20217月発効)を1トン当たり5575ドルに維持すると決定。

(中島敏博)

(トルコ)

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