米国の7月雇用者数は前月比52.8万人増、失業率は3.5%に低下、時給の伸び加速

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月08日

米国労働省が85日に発表した7月の非農業部門雇用者数は前月から528,000人増と、市場予想の258,000人増を大幅に上回った。就業者数が前月から179,000人増加し、失業者数が前月から242,000人減少した結果、失業率は3.5%(市場予想は3.6%)だった(添付資料図参照)。

失業者のうち、一時解雇を理由とする失業者は前月(827,000人)より36,000人減の791,000人、恒常的な失業者は前月(1273,000人)より107,000人減の1166,000人だった。

労働参加率(注)は、生産年齢人口が前月から177,000人増加し、労働力人口が前月から63,000人減少した結果、前月から0.1ポイント低下し、62.1%だった(添付資料表1参照)。

平均時給は32.27ドル(6月:32.12ドル)で、前月比0.5%増(6月:0.4%増)、前年同月比は5.2%増(6月:5.2%増)と前月比の伸びが加速した。

7月の非農業部門雇用者数の前月差528,000人増の内訳をみると、民間部門は471,000人増で、うち財部門が69,000人増、主な業種として製造業は3万人増、建設業は32,000人増だった。サービス部門は402,000人増で、教育・医療サービス業122,000人増、娯楽接客業96,000人増、対事業所サービス89,000人増、運輸倉庫業21,000人増と多くの業種で引き続き増加しており、前月増加に転じた小売業も引き続き22,000人増となった。なお、政府部門も57,000人増と2カ月ぶりに増加した。(添付資料表2参照)。

7月の人種別失業率は、白人3.1%(前月3.3%)、アジア系2.6%(前月3.0%)、ヒスパニック・ラテン系3.9%(前月4.3%)、黒人6.0%(前月5.8%)だった。

GDP成長率が2四半期連続でマイナスとなるなど(2022年7月29日記事参照)、弱い内容が目立ち始めている最近の経済統計だが、雇用動向はほぼ一貫して強く、7月も予想以上の堅調な内容に、いまだ底堅い米国経済を示すかたちとなったと言えそうだ。一方で、82日に公表された雇用動向調査によると、6月の求人件数は約1,070万件で3カ月連続の減少となっており、勢いの鈍化傾向も見られる。企業の動向をみても、自動車メーカーのフォードは最大8,000人の従業員を解雇すると報道されたほか(ブルームバーグ720日)、小売り大手のウォルマートでは約200人の従業員を解雇するなど(CNBC83日)、企業の雇用姿勢には変化が見られる。インフレ抑制のため金融引き締めを急ぐ連邦準備制度理事会(FRB)にとっては、雇用者数増となった今回の雇用統計はさらなる金融引き締めを進める理由の1つとなりそうだが、軟調傾向も見せる米国経済を前に、どこまで金融引き締めを進めるかという問題もある。そのため、近く公表される7月消費者物価など直近のインフレ動向が今後の金融引き締めを見極めるポイントとなりそうだ。

(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 1490e30f7978306c