米財務省、対米外国投資委の2021年報告書公表、簡易的申告・届け出件数とも過去最多

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月04日

米国財務省は82日、対米外国投資委員会(CFIUS)の活動に関する2021年の報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

CFIUSは、外国から米国への投資が安全保障に脅威をもたらすかどうかを審査する省庁横断の委員会だ。投資案件の種類によっては、CFIUSへの事前申請が義務になっている場合もあるが、それ以外は任意の申請となっている。ただし、申請のない案件でも、CFIUSが事後的な調査に基づいて案件を審査する場合もある。2021年の報告書で明らかになった傾向としては、簡易的な申告(declaration、注)が164件、CFIUSの詳細な審査が伴う届け出(notice)が272件と、いずれも過去最多となった点が挙げられる。企業の国籍別では、簡易的な申告はカナダ(22件)、ドイツ、日本、シンガポール、韓国(いずれも11件)、英国(10件)が上位となっている。届け出については中国(44件)、カナダ(28件)、日本(26件)、ケイマン諸島(18件)、フランス、シンガポール、韓国、英国(いずれも13件)が上位に入っている。申告と届け出を総合して産業分野別で見ると、半導体など「コンピュータ・電子機器製造」、航空機など「輸送機器製造」、ソフトウエア発行など「出版業」、研究開発など「専門・科学・技術サービス」、発電など「公益事業」と「不動産」で申請件数が多い。

財務省はこのほか、2021年の特筆すべき点として、申請件数の約6割で定められた審査期間を順守している点や、届け出の受理に要する日数が前年比で短縮されているなど、CFIUSの手続き面が効率化した点を挙げている。また、審査結果については従来どおり、過半数の案件を無条件で承認しており、2021年に承認した案件で軽減措置を求めたものは10%にすぎないとしている。CFIUSが国家安全保障上の脅威ありと認めた案件について、大統領も同意した場合は取引を阻止できるが、2021年に大統領によって阻止された案件はなかった。これまで大統領が阻止した案件は6件あり、直近ではドナルド・トランプ前大統領が20203月に、中国企業に対して米IT企業の売却を命じた(2020年3月13日記事参照)。なお、CFIUSは自主的な申請がない案件も含めて監視と法執行を行うため、適正な人材の採用を継続しているとしている。

(注)2018年に成立した「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」で新設された申請の種類で、申請者が投資案件の概要を原則5ページ以内にまとめて提出し、CFIUSは受理してから30日以内に審査を終え、申請者に対して追加の行動の要否を伝えるプロセス。

(磯部真一)

(米国)

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