ウクライナ情勢受け、トルコ経由の対ロシア貿易を模索する動き
(トルコ、ウクライナ、ロシア、欧州)
イスタンブール発
2022年08月18日
ロシアがウクライナに侵攻してから約半年となり、欧米の対ロシア制裁の影響による物流の停滞が問題となる中、トルコを通じたロシア向けトランジット貿易を模索する動きがみられる。
ロシア経由で極東と欧州をつなぐ陸上ルートが実質的に閉鎖されたことで、欧州からトルコ、ジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタンを経由して中国とつなぐ「中央回廊」(注1)が注目されるようになり、経由国間での調整が頻繁に行われていると報じられている(2022年6月27日付トルコ国営アナドル通信、8月2日付国営アナドル通信
)。
ロシアも、閉鎖されたルートの代替として、アゼルバイジャン、イランをつなぐ「南北回廊」開発の加速化を求めている。
こうした中、NATO加盟国でありながらロシアとの経済関係が大きいトルコは、欧米による対ロシア制裁には参加せず、ロシアとウクライナの仲介役を買って出ており、ウクライナ産の穀物輸送再開で成果を見せている(2022年7月26日記事参照)。
関連企業の間でも、ロシア向け商品をトルコ経由でトランジット手配する輸送ルートが模索されていると報じられている。トルコ現地紙「デュンヤ」(8月4日付)の記事などによると、トルコに持ち込まれた商品は、海路ではイスタンブール、カラス、サムスンなど北部の港からロシアのノボロシースクやポルト・カフカスに持ち込まれ、陸路ではジョージア経由で輸送されている。特にEU、アジアからの商品を積載したコンテナは、対ロシア輸出禁止品目のスクリーニング後、トルコの港に持ち込まれ、再輸出プロセスを通じてロシアに輸送される。このため「トルコの倉庫はロシアへの輸送品であふれかえっている」という。
同記事はさらに、ロシアのビジネスマンがトルコ国籍を取得し(注2)、トルコで起業、本国との貿易を行い始めているとしている。
既に欧州企業はアジアなどの生産拠点からトルコ経由でのロシアへの輸送機会を探っており、トルコ物流企業によると、問い合わせが頻繁に寄せられているという。
トルコの産業界では、対ロシア制裁はトルコが「倉庫や架け橋」として機能する「歴史的な機会」を提供しているとみる向きも出ている。
(注1)ジェトロの調査レポート「南コーカサス諸国産業・投資概況~アゼルバイジャン アルメニア ジョージアの物流を中心に~(4.1MB)」(2017年8月)を参照。
(注2)40万ドル以上の不動産を購入した外国人はトルコ国籍を取得できる(2022年5月13日付官報)。
(中島敏博)
(トルコ、ウクライナ、ロシア、欧州)
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