バイデン米政権、イランの石油化学大手支援で複数国企業に制裁

(米国、イラン、アラブ首長国連邦、中国、香港、シンガポール、マレーシア)

ニューヨーク発

2022年08月03日

米国のバイデン政権は81日、イランの石油化学大手ペルシャ湾化学産業(PGPIC)の子会社のペルシャ湾化学産業商業(PGPICC)を支援した疑いなどで、複数の国籍にまたがる企業6社を「特別指定国民(SDN)」に指定した。

PGPICCはイランで最大級の石油・石油化学製品のブローカーで、既に米国からSDNに指定されているが、イラン産の石油・石油化学製品を継続的に国外に販売しているとされる。今回は主にPGPICCによる東アジア向けの石油・石油化学製品の販売を支援した企業がSDNに指定された。制裁は20188月に発表した大統領令13846外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、国務省と財務省がそれぞれ発動しており、財務省が616日と76日に発動した同様の制裁に続くもの(2022年6月17日記事2022年7月7日記事参照)。国務省は中国(香港)、シンガポール籍の企業2社とパナマ船籍のタンカー1外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます財務省はアラブ首長国連邦(UAE)、中国(香港)、マレーシア籍の企業4外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの計6社と1隻をSDNに指定した。今回指定した制裁対象の詳細は財務省の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

制裁対象には、在米資産の凍結や米国人(注)との資金・物品・サービスの取引禁止の制裁が科される。SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も制裁対象となる。また、外国人が今回の制裁対象と特定の取引をした際には、米国政府による制裁または法執行の対象になり得るとしている(いわゆる二次制裁の適用)。さらに、外国の金融機関や個人が制裁対象に今回指定された法人・個人を支援したような場合も、制裁が科される可能性がある。対イラン制裁の全容については財務省のウェブページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

米国はイランとの間で核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」の再建に向けた間接協議を行ったが、進展は見られていない(2022年6月30日記事参照)。ジョー・バイデン大統領が71316日に中東のイスラエルとサウジアラビアを歴訪した際には、両国首脳とともに、イランによる核兵器所有を許さないとの声明を出しており、イラン側から反発を招いた(2022年7月20日記事参照)。JCPOA再建への糸口が見つからないまま、米国が対イランで圧力を高めている状況が続いている。

アントニー・ブリンケン国務長官は制裁発表に際してこれまで同様、「米国は、双方がJCPOAの完全な履行に復帰すべく、意味のある外交努力を真摯(しんし)に継続してきた。イランは今日に至るまでそれに値する真摯な関与を見せていない。イランがJCPOAの完全な実施に戻らない限り、同国からの石油や石油製品、石油化学製品の輸出に対して制裁権限を活用していく」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを繰り返した。

(注)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(磯部真一)

(米国、イラン、アラブ首長国連邦、中国、香港、シンガポール、マレーシア)

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