バイデン米政権、制裁回避のイラン産石油・石油化学品取引で複数国企業・個人に制裁
(米国、イラン、アラブ首長国連邦、中国、香港、シンガポール、ベトナム)
ニューヨーク発
2022年07月07日
米国のバイデン政権は7月6日、制裁を迂回(うかい)したイラン産石油・石油化学製品の取引に関与した疑いで、複数の国籍にまたがる企業・個人ネットワークを「特別指定国民(SDN)」に指定した。
制裁は、国務省と財務省がそれぞれ、2018年8月に発表された大統領令13846に基づいて発動しており、財務省が6月16日に発動した同様の制裁に続くもの(2022年6月17日記事参照)。国務省はベトナム、シンガポール、イラン籍の企業5社、財務省はイラン、中国(香港)、アラブ首長国連邦(UAE)籍の企業8社と、UAE国籍およびイラン国籍の個人2人の計13社と2人をSDNに指定した。今回指定した制裁対象の詳細は財務省の発表内容を参照。
制裁対象には、在米資産の凍結や米国人(注)との資金・物品・サービスの取引禁止の制裁が科される。SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。また、外国人が今回の制裁対象と特定の取引をした際には、米国政府による制裁または法執行の対象になり得るとしている(いわゆる二次制裁の適用)。さらに、外国の金融機関や個人が今回制裁対象に指定された法人・個人を支援したような場合も、制裁が科される可能性がある。対イラン制裁の全容については財務省のウェブページを参照。
米国はEUによる仲介の下、6月28~29日にイランとの間で、イラン核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」の再建に向けた間接協議を行ったが、進展は見られなかった(2022年6月30日記事参照)。交渉の現状について、国務省のネッド・プライス報道官は7月5日の記者会見で「進展がなく、後退と同然だ。これは無期限の交渉ではなく、米国が国家全保障上の利益と考える限りで続く交渉だ」と述べ、イラン側に早期の譲歩を促した。また、同報道官は「米国側のゴールは、イランが検証可能かつ恒久的に核兵器を取得しないことに合意することだ」と語っている。アントニー・ブリンケン国務長官も「米国は、双方がJCPOAの完全な履行に復帰すべく、意味のある外交努力を真摯(しんし)に継続してきた。イランは今日に至るまでそれに値する真摯な関与を見せていない。イランが方針を変えない限り、同国からの石油や石油製品、石油化学製品の輸出に対して制裁権限を活用していく」として、6月の制裁時と同様の声明を繰り返した。
(注)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。
(磯部真一)
(米国、イラン、アラブ首長国連邦、中国、香港、シンガポール、ベトナム)
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