バイデン米大統領の中東訪問にイランは批判的な反応

(イラン、米国、イスラエル、サウジアラビア)

テヘラン発

2022年07月20日

71316日に中東を歴訪した米国のジョー・バイデン大統領は、最初の訪問地イスラエルでヤイル・ラピッド首相と共同声明を発表。その中で「イランが核兵器を所有することを決して許さず、国力のあらゆる要素を使用する用意がある」とした(7月14日付在イスラエル米国大使館)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。その後訪問したサウジアラビアでも、同様の内容を含む共同声明を発表した7月16日付サウジアラビア国営通信(SPA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

イランでは、バイデン大統領の中東訪問に関し、イラン国営イスラーム共和国通信(IRNA)が13日に「バイデンの中東ツアーは危機解決か、危機作りか」と題する記事を掲載(7月13日付IRNA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。訪問の日程や背景などを報じるとともに、バイデン大統領がこれまで非難してきたサウジアラビアの人権問題を棚上げしている点や、トランプ前大統領がイラン核合意の包括的共同行動計画(JCPOA)から脱退したことを失敗と認めているにもかかわらず、JCPOAに戻るという公約をいまだ果たしていない点など、米国の対応の矛盾点について指摘した。

また、同紙は15日付で「米国はイスラエルの安全保障のためにコミットする」とするバイデン大統領とラピッド首相の共同声明は「イランを標的とするだけでなく、アラブ諸国やイスラーム諸国に対するイスラエル政権の優位性を支持するもの」と批判するイランのナセル・キャンアーニー外務報道官のコメントを掲載した(7月15日付IRNA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同報道官は17日付の記事でも「中東歴訪中にバイデン大統領が行った核開発に関する反イラン的なコメントには根拠がない」と批判している(7月17日付IRNA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

さらに、バイデン大統領が武力行使の可能性について否定しなかった点については、アフガニスタンからの撤退などを例に、「過去に何が起きたか思い出すべきだ」とする軍のスポークスマンのアボルファルズ・シェカルチ准将のコメントを伝えている(7月15日付IRNA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

大統領府に近いメディアとされている「イラン・デーリー(IRAN DAILY)」(717日付)では、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子がバイデン大統領との会談で人権問題で反撃したと報じたが、それ以外の「テヘラン・タイムズ(Tehran Times)」(716日付)や「イラン学生新聞(ISNA)」などのメディアは、おおむねIRNAと同様の論調だった。

また、強硬派寄りとされる「タスニム通信」(7月13日付)は、軍事的行為も必要だとするイスラエル首相の脅迫的なコメントについて、「イランは断固として、いかなる敵対的行動にも、テルアビブが後悔する方法で対応する」としたキャンアーニー外務報道官のコメントを掲載した。

(鈴木隆之)

(イラン、米国、イスラエル、サウジアラビア)

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