シャーマン米国務副長官が太平洋諸国を歴訪、太平洋地域への関与強化を示す

(米国、中国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、トンガ、サモア、ソロモン諸島)

米州課

2022年08月10日

ウェンディ・シャーマン米国務副長官は83日から9日までの日程で、サモア、トンガ、ソロモン諸島、オーストラリア、ニュージーランドの太平洋諸国を歴訪した。また、ソロモン諸島訪問中の87日には、太平洋戦争中のガダルカナル島の戦いから80年を迎えるのに合わせて、日本政府が主催した慰霊式に出席した。

慰霊式出席後に記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行ったシャーマン副長官は「米国は太平洋地域における関与を深め、関係を強化することに真摯(しんし)に取り組んでいる」と述べ、米バイデン政権のインド太平洋重視の姿勢を強調した。具体的には、米国によるソロモン諸島への新型コロナウイルスワクチンの提供や、米国大使館新設による米国からの観光拡大、海洋安全保障強化に向けた米国沿岸警備隊との共同訓練支援のための資金提供など、多方面で米国がソロモン諸島に投資を拡大しているとして、米国のコミットメントを説明。また、20229月に米ニューヨークの国連本部で開催される国連総会に合わせて、太平洋諸国の首脳をホワイトハウスでの会合と夕食会に招待すると明らかにした。

記者からの「中国による太平洋地域への影響力拡大を受けて、米国がこれまでおろそかにしていた太平洋地域との関係を再認識するということか」という質問に対しては、「米国も西海岸は太平洋に面しており、ハワイ州は太平洋上に位置する」「米国も太平洋の国の1つ」と前置きした上で、「もちろん地政学的な要素もあるが、基本的なことは、世界の未来は太平洋とインド太平洋で描かれるということ。ブリンケン長官がフィジーを訪問し、インド太平洋戦略(2022年2月14日記事参照)を発表したのも、インド太平洋地域がわれわれの将来にとって極めて重要だからだ」と述べた。

80年前に太平洋戦争の最前線となった太平洋島しょ国は現在、米中が各国をそれぞれの陣営に取り込もうとする戦略的競争の最前線にある。中国外務省は2022419日、ソロモン諸島との間で安全保障協定を締結したことを発表。これを受けて422日、米国国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調整官らが同国を訪問してマナセ・ダムカナ・ソガバレ首相らと会談を行い、ソロモン諸島の国民の福祉向上のための支援策を含む両国間の協力分野に関する意見交換を行ったと発表していた。

また、米国のジョー・バイデン大統領は日本訪問中の523日に、米国や日本を含む13カ国とインド太平洋経済枠組み(IPEF)の立ち上げを発表。NSCのジェイク・サリバン大統領補佐官(安全保障担当)は526日、フィジーが14カ国目の発足メンバーとしてIPEFに参加したことを発表した(2022年5月30日記事参照)。これを受け、直後の530日に中国の王毅国務委員兼外交部長(外相)が同国を訪問してラトゥ・ウィリアメ・カトニベレ大統領と会談を行い、中国のフィジーへの支援提供について意見交換を行ったと発表するなど、米中の太平洋島しょ国をめぐる関係強化の動きや牽制の動きが続いている。

(葛西泰介)

(米国、中国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、トンガ、サモア、ソロモン諸島)

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