バイデン米政権、フィジーのインド太平洋経済枠組み(IPEF)参加を発表

(米国、フィジー、中国)

ニューヨーク発

2022年05月30日

米国の国家安全保障会議(NSC)のジェイク・サリバン大統領補佐官(安全保障担当)は5月26日、太平洋諸島のフィジーがインド太平洋経済枠組み(IPEF)への参加を決定したことを歓迎する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

IPEFはジョー・バイデン大統領が訪日中の5月23日に立ち上げた通商枠組みで、米国と日本を含む13カ国(注)が参加を表明している(2022年5月24日記事参照)。フィジーは太平洋諸島の国としては初の参加で、14カ国目の創設メンバーとなる。サリバン補佐官はフィジーの参加により「今やIPEFは北東・東南アジア、オセアニア、太平洋諸島と、インド太平洋の地域的多様性を反映することになった」としている。また、米国と親密なパートナーで地域のリーダーであるフィジーの参加はIPEFに重要な価値と視点を加えることになるとし、フランク・バイニマラマ首相に感謝するとした。

今回の発表は、中国が太平洋諸島の国々と安全保障などに関する地域協定を模索しているとの報道が出た直後の動きとなった。ロイター(5月25日)など複数の報道によると、中国は同地域の10カ国と治安や安全保障、データ通信の協力にかかる協定の締結を模索しているとし、5月30日にはフィジーで外相会合を開催する予定としている。中国からは王毅国務委員兼外交部長が参加予定で、同氏は26日には同地域で最初のソロモン諸島を訪問している。中国とソロモン諸島は4月に安全保障協定を締結している。米国務省報道官のネッド・プライス氏は25日の記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、中国の動きは認識しており、同地域の各国の主権にかかわる決定を尊重するとしつつ、「中国から安全保障に関する能力・手法を輸入することが太平洋諸島のどの国にも役立つとは思わない。むしろ、そうすることは地域的・国際的な緊張に火をつけ、北京が国内の治安機構を太平洋に拡大することへの懸念を高める」と指摘している。

アントニー・ブリンケン国務長官は5月26日に行った対中演説で、中国との競争を効果的に進める重要な要素として多国間連携を掲げており、具体的な成果としてIPEF立ち上げを挙げていた(2022年5月27日記事参照)。今後も米中間で、自らが主導する地域枠組みに各国を取り込もうとする動きが激しくなりそうだ。

(注)米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア。

(磯部真一)

(米国、フィジー、中国)

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